第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
ファラはテンギを保護するため、ロニネ(バリア)を張っていたのである。
その球状のロニネは、落雷からテンギを守っても、中は「水」だった。
10本の足、10本の腕で、バタバタともがく巨体が、宙に浮いた水の球体の中にあった。
さすがにファラも息を切らしている。
魔法を維持するために、意識を失わぬよう、必死で力を集め続けた。
フィヲは見ていられなくなって駆け寄り、ファラの体を支えるように抱き止める。
ホッシュタスは、テンギを閉じ込めたロニネを壊そうとしたが、無駄だった。
「ゼハッ・・・、あいつが窒息する前に・・・、水を飲み込んだら、ロニネを外すから・・・、あの魔導師を・・・!!」
「分かった、ファラくん、わたしがついてるからね。」
急速な回復はもうできない。
体力がもつかの勝負であり、邪魔する数人をいかに退け得るかに全てがかかっていた。
「うわあああっっっ・・・!!」
今まで大地から吸い続けていた魔力が、吸い上げる力もなくなったことで、今度は吸われる方へ転じてしまったようだ。
ファラの両腕がバチバチ鳴りながら煙を上げた。
「ヒーリングをやめて!!
わたしがかわりに・・・。」
ホッシュタスが近付いている。
フィヲを狙っている。
ファラはテンギに集中していた力を解放した。
水の球体が徐々に降下して、地面に触れるところまで来た。
と、まさにそれが弾けようという時、テンギが大量の水を吸入したのである。
「おのれ・・・!!」
ホッシュタスが怒りを露わにした。
ほとんど何の感情も出さない男が、激怒した。
フィヲをかばったファラに、宝玉の杖で瞬時に魔法を撃ってきた。
本来の体力ならば避(よ)けられたに違いない。
黒紫色の、電気エネルギーのようなものがファラの体にまとわりついて、力を奪い取っていく・・・。