第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
テンギのために作られた巨大な槍は、剣などの武器よりも速く標的に到達する。
ファラは盾でかわせば突き飛ばされると直覚して、身でかわした。
ガトレーンとホッシュタスを交互に見回していたフィヲが、バリアごと突き飛ばされた。
なんという機動力だろう。
直撃したら即死である。
「ファラくん、ごめん!
わたし大丈夫よ。」
ファラもロニネを張った。
ホッシュタスがトゥウィフ(衝撃)を唱えながらファラを狙っている。
フィヲがそれに気付いた。
ファラも気付いていたが、テンギを押し返さなければならない。
無刃刀の一振りを、テンギのナックルが阻む。
すぐに別の腕が伸びてきた。
フィヲはバリアでホッシュタスに体当たりする距離まで走って、その詠唱を阻んだ。
彼女はファラと旅をするようになってから、魔法の修得がとても早かった。
無と死滅を司る「グルガ」を合わせ、相手の発動を無効にすることもすでにできる。
「なんだ、あの女は・・・。」
ホッシュタスは感情の起伏のない男で、魔法を消滅させられたことに憤るわけでもなかったが、術者としてのフィヲに興味を持った。
そしてそれ以後、ファラを狙うのはやめてしまった。
フィヲがいる限り、魔法の応戦は無駄だと知ったのである。
テンギとファラの戦いが続いている。
これほど攻守に無類の強みを持つ相手はいまい。
ファラは剣を主体とする戦闘ではなく、生来得意とした魔法による戦法でテンギを撃退しようと決めた。