第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
10本ある腕のうち、中の1対は腕組みをしている。
それが先まであった、元々の彼の腕である。
残る4対はそれぞれ、殺戮の道具を欲していた。
それでガトレーンが投げてよこした剣は、テンギを大いに喜ばせた。
また、ホッシュタスも武器を持ってきた。
1対のナックル。
巨大な槍。
これでも手が余っている。
テンギの姿態のおぞましさは腕の数だけではない。
脚も5対あり、後足と前足の4本で歩く。
前2本は蹴撃のためにそそり立っている。
残る脚は防御にも攻撃にも備えていた。
ファラとフィヲがテンギ一人を相手にするという構図ではなくなった。
二人が、五身一体の怪物と対峙しなければならない。
その上ガトレーンが控えている。
彼はファラが油断すればいつでも生命を取りに来るだろう。
更にホッシュタス。
全く未知の敵であり、レボーヌ=ソォラで最も危険な敵、フィフノスの仲間だという。
いずれにしても、ファラはこの死地を切り抜けなければならない。
フィヲを預かっているために、状況が困難であればあるほど、生き抜く意思は強くなった。
『シェブロン先生、もう少しです、待っていてください・・・!!』
フィヲは涙を流しながら、ファラが立ち向かおうとする敵に誰か加勢する者があるならば、必ず自分が止めてみせると心に決めた。
「こちらはいつでもいいぞ、テンギ!!」
獣のような声で、テンギは横を向き、笑った。
顔は横を向いているのに、槍の先が飛んできた。