The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」

第 14 話
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大気が冷えてきた。
梅雨期にさしかかろうとする季節にしては暗くなるのが早い。
雷雲が厚く、空を覆っているのである。

双方の後ろから、バーミナたちが起こしてくれたキャンプ・ファイアの炎が闇を払っていた。

遠雷が、光っては鳴り、遠ざかっては近付いてくる。

今頃になって急に、ザーっと、激しい雨が地面を叩き始めた。
足元に飛沫(しぶき)が立つほどだ。

「ファラくん、構わないわ、一緒に戦います。」
「あいつらを見張っていてほしい。
ぼく一人で太刀打ちできなくなったら、たのむ。」
「はい。」

ガトレーンとロールウェールも寄り合い、こちらを見ている。
彼らは何やら囁いては、ぶしつけな笑い声を響かせた。

その時、じっと空を仰いで雨に打たれていたテンギが、大声を放った。
ウォー・クライである。

鬼神の叫びは雷鳴の轟きにも似て、天と地とを震わせていった。

「貴様、名前は?」
「ファラ。
母はカーサ=ゴ=スーダの生まれだ。」
「・・・忌まわしい。
少数民族の血め、根絶やしにしてくれる・・・!!」
「お前にも同じ血が通っているだろう。」

これはタブー(禁句)だった。
テンギの戦闘本能が、殺戮の衝動が、巨体を駆け巡る。

「さあ、来い!」

開始の合図はファラからである。
テンギの右手の剣が、無刃刀と交差した。

バキッ・・・。

最初の会戦時、魔石の盾を突いて毀(こぼ)れていたその剣は、ファラの一撃で砕けてしまった。
すぐに左手の剣先が飛んでくる。

こちらもファラのテダン(雷電)が直下した後、全体、真っ黒くなっていた。

戦いは勢いが肝心だ。
残る武器も破壊して一気に追い詰めてしまおう。

ファラは飛んでくる左からの剣を受け止める素振りから、すっとかわし、地面に打ち付けさせた。

すると・・・。

ズドーン。

黒くなった剣が大地に突き刺さると同時に、テンギがまた落雷を受けたと錯覚するほどの近距離で、ファラのテダンが炸裂した。

先はこの左手の剣に落とされたので、テンギは今度こそ死んだ思った。

ガツン、ガツン、ドゴン。

テンギがふらついているところへ、ファラの連続攻撃が、正面に3発、ヒットした。

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