第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
「車の明かり・・・!!
ロマアヤのみんなだわ。」
フィヲはロールウェールをちらと見た。
動けば追って来るに違いなかった。
だが、枯れ木の枝を拾い集めている場合ではない。
仲間たちに危険を知らせるとともに、燃料を分けてもらうのがいいと思った。
ファラに伝えてから行こうにも、敵に聞かれてしまう。
やむなく駆け出すと、女剣士は追ってきた。
負傷しているので回り込まれることはなさそうだ。
『ああして邪魔をするんだもの、少しくらい振り払っても薬になる。』
性能の良いフィヲのバリアは一方通行で、外からの攻撃を弾き、内からの攻撃を貫通する。
時々振り向いては突風を起こしたり、旋風を吹かしたりした。
「小娘・・・!!
援軍を呼びに行くか。
あの少年がどうなっても知らぬぞ!!」
今のガトレーンとロールウェールが二人でかかっても、ファラに太刀打ちできまい。
そしてテンギが起きてしまわぬよう急ぐのである。
果たして、彼らは仲間どうしなのか。
だとしたら、なぜ倒れたテンギを助けたり、起こそうとしたりしないのか。
林を抜ける風のように、フィヲはロマアヤ軍の野営に入った。
振り払ってもまだ後からはロールウェールが来ていたので、誰か知り合いがいないか、見て回った。
そこは女戦士バーミナの宿所だった。
「フィヲさん!!
今、テンギと交戦中ですか!?」
「ええ、・・・こんなに暗くなっても、ファラくんが戦わなくちゃいけなくて、・・・はあッ、すみませんが、キャンプ・ファイアを起こすのに、何人か力を貸してもらえませんか・・・。」
「もちろんです、すぐに向かわせましょう。」
「わたしが行く方に真っ直ぐです。
あと、敵の女剣士が追ってきていて、わたしはその女(ひと)をできるだけ遠ざけながら、押し返しながら戻りますので。」
そう言うと、フィヲはバーミナに方向だけ示し、すぐ来た道を引き返して行った。
ここからは戦闘だ。
フィヲはファラのサポート役だったが、一刻も早く戻るには、ロールウェールの妨害を抜いて通らなければならない。