第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
依然として空には暗雲が立ち込めている。
かなり暗くなってきて、首都郊外の戦場は、明日に持ち越すか、早く決着するかの選択を迫られていた。
ガトレーンが頭を振りながら起き上がった。
彼はすぐにファラの立っている所を見据えて、しばらくじっとしていた。
「なあ、お前たちの戦いは、いつ終わるんだ?
やはり相手が死ぬときまで続くんじゃないか。」
先まで怒りに我を忘れて戦っていたファラも、落ち着きを取り戻している。
凶悪な相手、凶暴な相手に綺麗ごとは通じない。
戦意に対して、望むところと力で応戦してやるのも有効である。
ファラの一閃一閃はいつも相手の生命を守りながら放たれるため、撃てば撃つほど、悪心を砕いていく。
それがガトレーンやテンギにどのくらい効いているだろう。
「ぼくの戦いは、お前がLIFEに目覚めるまで続く。
それで構わない。」
黒騎士は地面に座り込んだまま高笑いした。
「じゃあ一生、戦い続けるんだな。」
「いいさ。
何が善で、何が悪か、理屈で分からないなら剣で教えてやる。」
それはガトレーンが最も憎む一言だった。
年少者に、またLIFEの剣士に、一体何を教わることなどあろうか。
「まだ撃たれ足りないようだ。
ヒーリングでもしてやろうか。」
ファラは相手を挑発していた。
「そうやって、死ぬ寸前まで苦しめて、死にそうになると慌てて治療するのか。
・・・偽善者どもめ!」
全く話にならない。
ガトレーンと出会ったのは今日が最初。
ファラは長い戦いになることを覚悟した。
何度も応戦していけば、きっとこちらの意思が伝わると信じた。
自己の腕前に陶酔するだけのガトレーンと、万人の内なる尊厳性を開花させるために戦うファラとでは、剣を振るう目的が決定的に異なる。
夜の闇は深まり、目を凝らさなければ、ガトレーンが座っているのか、立ち上がったのか分からないくらいになっていた。