第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
地面に背中を打ち着けたロールウェールが、先に起き上がった。
ファラは相手が女性であるのであまり強く撃ちに行けない。
フィヲが遮った。
「あの女(ひと)はわたしに任せて。
・・・ねえ、テンギが起きたらどうするの?」
ファラがガトレーンの相手をしている間に、宙へ浮かせたテンギは地面まで降りて横たわっていた。
「最悪、2対1になってもいい。
手はいくらでもあるよ。
もし危ない時は、・・・加勢してほしい。」
「うん。」
二人は同い年だったので、過剰にかばい合うところがない。
ファラはこれまでの戦いの中で、全面的にフィヲを信頼している。
少し身を軽くしているのだろう、フィヲもファラと同様、地面を滑るように走ることができた。
フィヲの武器は細身の長いロッドである。
魔法で強化しなければ、剣の一撃で壊れてしまいそうだ。
ロールウェールは一度起き上がり、恐ろしく醜い形相でフィヲを睨んでいたが、体を打ちつけたために吐き気を催すらしく、うつ伏してしまった。
無駄に近寄り過ぎるには危険な相手だ。
フィヲは距離を取って見ていた。
「気に障る娘だねえ・・・!!
その首を刎(は)ね飛ばして、少年に投げつけてやりたいよ・・・。」
あまりにひどいことを言われたのでフィヲは胸が疼(うず)いた。
しかし、相手は強気な言葉ほどに戦えない状態である。
「なぜ、ファラくんを狙うの?」
「さっき彼が言ったじゃないか。
LIFEの剣士と聞いて生かしてはおけないのさ。」
「到底、勝ち目はないでしょう。」
再度、ロールウェールを吐き気が襲った。
「黙れ!
あたしたちは手段を選ばないんだ。
この場を切り抜けても、物陰や暗闇、背後には常に気をつけるがいい・・・!!」
なんと陰険な性質だろう。
LIFEに対して根深いコンプレックスを抱いていることは明らかだ。
フィヲはだんだん、相手のことが哀れに思えてきた。