The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」

第 07 話
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「俺はLIFEの剣士と聞くと無性に斬りたくなってな。
剣に生きることと不殺生、その中にある矛盾を、欺瞞を、ちょうどその刃のない剣のような無意味を、思い知らせてやりたくなるのだ。」

すでに我慢の限界に達していたファラの、闘志が燃え上がった。
本来の姿でないにせよ、テンギを一撃でダウンさせた彼の内なる闘神が、今度はガトレーンとの交戦の機会を探している・・・。

『早く来い・・・。
こちらから撃ちに行ってもいいんだぞ・・・!!』

ファラの目に捕らえられた瞬間、ガトレーンはまだ身構える前に、全身に冷や汗が出てくるのを覚えた。

すると突然、ガツン、と視界が狭(せば)まって真っ赤になった。

兜が飛んでいった。
彼は顔面を強打したショックと、侮った相手に斬られたショックで、意識が消沈してしまった。

後ろへ倒れようとするガトレーンの首を、ファラが掴んで持ち上げた。

「戦意はどうした。
さっきの高言はどこだ。
もう止(や)めるのか。」

黒騎士は腰に佩(は)いた剣の柄(え)に手をかけていたが、指が動かない、腕も持ち上がらない。
だらりと、少年の手に握られたまま、どうすることもできなかった。

ロールウェールが目を吊(つ)り上げて飛び掛ってきた。

その時フィヲは、とっさの出来事に、何が起こったのか分からなかった。

ファラは、ガトレーンを殺してしまうのだろうか?

彼女の場合、恐怖に立ち竦(すく)むよりも先に体が動いていた。
ロールウェールの背中を追う。

女剣士の鋭利な切っ先が、ファラに向かって突き立てられようとしていた。

悪夢の中の出来事のように、声が引きつって出なかったのを、フィヲは目覚めの瞬間の絶叫に似た大声で打ち破った。

「止まりなさい!」

地面から突震が起きた。

ロールウェールは真上に飛んだ。

ファラはガトレーンをくだらないもののように打ち捨て、フィヲを見て微笑んだ。
ロールウェールが頭上を飛び越えて行くのも気にかけず、彼女の方に歩み寄っていく。

フィヲの右手を両手で握ったファラは、再び真剣な眼差しになって、言った。

「最後まで一緒に戦おう。」

二人は同時にある感情を、衝動を、胸の奥にしまい込んだ。
そして互いに背を合わせると、次の出方を考えていた。

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