The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」

第 05 話
前へ 戻る 次へ

夕刻近い空に、暗雲が覆い始めた。

「あなたの出番になったらすぐに解いてあげる。
それまでおとなしくしていなさい。」

女の後ろから、黒い馬に乗った騎士が現れた。
この男がガトレーンである。

「おおい、少年、探したぞ。
夢中になるのもいいが、背後に気をつけろ。」

そう言って彼は脇差を抜き、ファラの足元に投げつけた。

最悪のタイミングだ。
ファラはごく不機嫌に、黒騎士を顧みて素早くよけた。

そのまま立っていたら踵(かかと)に重傷を負うところだった。

ファラが重力球に集中できなかったので、テンギは自ら起こしたその魔法を振り解(ほど)いてしまった。

「まあ、そう焦るなよ。
試合再開といこう。
これだけの勝負を、見逃すところだった。」

生命を賭した勝負を、面白半分で観戦に来るとは。

しかしフィヲが捕らわれている。
下手に逆らえない。

『フィヲも落ち着いてくれば、あんな騎士二人、どうにでもできるだろう。
悔しいが、テンギを先に倒してしまわなければ・・・。』

頭に血が上っている感じだ。
今までファラはこんなに怒りを覚えたことはなかった。

立て直したテンギが言う。

「小僧め。
次はお前の番だ。
魔法を撃ってこい。」

望むところである。
全身に力が漲ってきた。

闘神ヱイユをも凌ぐ大魔法力が、少年の中で目醒めかけていた。

テンギとファラの目が合う。
鋭い眼光に、一瞬間、冷酷非道な鬼神テンギが、心の凍てつくような恐怖を覚えた。

横向きに剣を構えていたファラの剣閃が、もう飛んできていた。
そして、自分の腹を、真一文字に斬る。

体内を剣がすり抜けた・・・。

電光が過ぎ去った後のようだ。

自分が生きているのか、死んでしまうのか、錯覚なのかも分からない混乱の中、後ろへ駆け抜けたファラの詠唱が微かに聞こえてくる。

雷雲を利用した「テダン(電撃)」だ。

今度は縦に一閃、天からの電光が迸り、左手に持った剣に落雷、テンギは感電して前へ倒れた。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.