第 09 章「無尽(むじん)」
第 02 節「所具(しょぐ)の法性(ほっしょう)」
“LIFE”連合軍とテンギのいる本隊が接触して、大惨事となる前に、なんとかファラたちは間に合った。
「よかった、サザナイアさんたちがシャムヒィへ。」
「少年、きみは?」
ヌダオン=レウォと会(かい)しながら、ファラはテンギの顔を見上げて笑みを浮かべていた。
仲間がテンギの後ろを回って首都シャムヒィに迫っていることを、聞こえるように言ってやった。
しかしテンギは戦闘狂である。
大セト覇国に特別な愛着もなければ、首都に家族がいるわけでもない。
この陸軍大将は国家がどうなろうと知ったことではなかった。
「ロマアヤ軍と別行動をとっています。
あいつのことはぼくに任せてください。
周りのセト兵を撤退させて、ブイッド港までの混乱を、鎮めていっていただけないですか。」
負傷で退がったハムヒルドは唸り声を上げながら手当てを受けていた。
盟友のレスタルダも、ヌダオンも、ファラには逆らい得ない何かを感じ、了解してくれた。
不敵に笑うファラを見て、テンギは興味を示している。
「なんだ、その小さな体で戦えるのか。」
「ああ。
存分にやり合おうじゃないか。」
フィヲは大急ぎで、メビカ軍、ウズダク軍、ロマアヤの仲間たちにも、この場を離れるよう、丁寧に促しに行った。
テンギを引き止めておくには、戦闘に持ち込むのが一番確実で手っ取り早い。
ファラは微小なインツァラ(爆発)を起こして相手の剣の1本を弾き飛ばそうとした。
だがテンギは柄を強く握り締めてまだ様子を窺っている。
これは挑発として効果があった。
テンギの背丈は3メートル。
ファラはほとんど半分である。
その少年が、もう間合いへ飛び込んでいた。
斜めに振り下ろされた大剣を、真上に飛んでかわし、ゾー(重力)を唱える。
テンギの左腕がギュッと地面に引っ張られた。
彼は前かがみになりながら、右手の剣先を鋭く伸ばしてきた。
ファラは魔石の盾で受けた。
テンギの剣先は刃がこぼれたが、力は死んでいない。
10メートル近くファラが飛ばされたところに、フィヲが戻ってきた。