The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」

第 22 話
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ヌダオン=レウォ率いるメビカ船団がズニミア半島の先に碇(いかり)を下ろすと、ウズダク海軍は半島の付け根、ほぼシャムヒィに近い内海(ないかい)にまで進入、上陸を開始した。

両国は、サザナイアやアンバス、ルアーズの説得により、停戦に合意している。
それでも長く続いた対立関係が尾を引いて、ウズダクはメビカに先を越されまいと、より近い方まで船を運んだのである。

半島に沿って陸路、馬車に乗りシャムヒィへ逃れようとしていたドルント提督は、キャプテン・ハムヒルドの一団とぶつかった。

「おおっと、再三使いを送ったはずだが、返事が来ない。
一体どうしたわけだい、提督さん?」
「艦長、こ、これは何の真似か。」
「大国の身勝手な侵略は終わりにしてもらおうじゃないか。
テンギの所へ行く。
あんたにも付いて来てもらいたい。」

元々シャムヒィの人間であるドルントは、約20年、ウズダクを統治するために首都スタフィネルに遣わされていたのだが、テンギによるセト国内のクーデター、ニサイェバ元帥の監禁、バツベッハによる支配、こうした一連の国家を揺るがす事変にすっかり動揺していた。

そこへ従属関係にあるウズダクが、彼の統治下の船団までが、反旗を翻したのだ。
今や彼の後ろ盾は敵視され、これまでの権限が及ばないばかりか、ほとんど捕虜といった扱いに屈しなければならなくなった。

東のウズダクが大型の軍艦で戦うのに対し、西のメビカは小型船で機敏に動き回る。
陸の上でも同じことが言えるようで、半島の先端から上陸したメビカは、早くもウズダクの東征軍に並びかけていた。

やがてワイエン連合軍と、首都シャムヒィからの部隊が衝突する。

西から東への進撃は、まさに破竹の勢いだった。

「ああっ、何度も言っておいたのに・・・。」

ルアーズとアンバスは、いきり立つ海の男たちに遅れを取りながら、ようやく追いついてきた。
出国前、サーベルを使う時は「アーマーブレイク」に止(とど)めるよう、全軍に徹底したが、守られていないのを見て、ルアーズは叱責した。

「逆で打てばいいでしょう!
ロマアヤはウズダクの兵を傷つけたりしたかしら!?」
「ああ、わかった、わかった。」

コダリヨン、ラゼヌター、メッティワもかなり腕の立つ将でありながら、ウズダク・メビカ両軍に殺傷の厳戒を守らせ、倒れた将兵の救護にあたるよう呼びかける役目に徹していた。

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