The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」

第 20 話
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「そういえば、船でフスカ港へ向かう途中、ボルフマンたちに戦いを挑まれたんだ。
術士もいた。
その時は本当に大した相手じゃなかったけど、どうしてぼくを狙っているんだろう・・・。」

追っ手の特徴から、騎士ルビレムは思い当たることがあった。

「レボーヌ=ソォラでは黒いローブの術士たちが暗躍していたと聞く。
このイデーリア大陸にも、数年前から時々、黒ローブが見受けられた。
そして黒をベースにした出で立ちの武芸人も、旅人として姿を見せていた。
剣を交えたことはないんだが。」

老婆ヴェサが何か気付いたらしい。

「うむ、ファラが始めてフスカに着いた日、あたしたちはシェブロンさんに言われて五芒星を作った。
そしてお前は五芒星の中心へ行って、怪物と対峙したのではなかったか。」
「そうでした。
あの事件についてはシェブロン先生にもノイさんにもいろいろお話を伺いましたが、『姿の見えない敵』がいるということしかぼくには分からなかったんです。」
「それさ。
あの夜、あたしはフィヲと一緒に方陣の一端を担っていた。
トーハさんが計算して、あれだけの半径の方陣を作ったんだ、お前に相当の魔力が注がれてもおかしくない状況だった。
しかしあたしたちは、方陣の形成を止めて、港町へ帰らなければならなかった。」

フィヲが当時を思い出して語った。

「うん、わたしも感じたわ。
五芒星の力がかき消されるほどの、もっと外側からの強力な負の力、『六芒星』のはたらきを・・・!!」
「おれもだ。
ちょっと先生たちが話してるのを聞いたんだけどさ、何でも大陸をまたいで形成させた、『星の規模の方陣』だとか。
それだけでっかい、黒ローブのネットワークが存在してるってことじゃないのか。」
「厄介だな・・・。
桁違いの怪人を相手にしようって時に、そんな根の深い敵まで来られたんじゃ・・・。」
「奴らも単体では弱いさ。
術士くらいならあたしでもなんとかなる。
問題はスヰフォスさんが言ってよこした『黒騎士』だろう。」

全軍の動きも決まらないまま、皆が考え込んでいる所で、再びルビレムが口を開いた。

「その騎士の特徴なら誰でも見て分かる。
隅々まで伝えておこう。
・・・ファラ殿だけが狙いなら、どうする、護衛を付けるか?」
「いいえ、フィヲとぼくとで対処します。
こういうことなら、いっそ、行軍と少しだけ離れて動いていた方がよさそうですね。
少しでも早くテンギの居所を突き止めて、ぼくたちで引っ張りますから。」

次第に作戦が組めてきた。
ルビレムはこれまで培ってきたゲリラ戦の知識を、セト国の地図を示しながらファラに教えてくれることになった。

また、交戦せずテンギの居場所を常に把握しファラへ報告する役目に、ルビレム直属の部下、女性兵士ナーズンを抜擢した。
彼女が部下の兵数名を使い、ファラと連絡をとってくれる。

「ナーズンは隠密行動が得意なんだ。
セトの村に居る時は娘の格好をして、現地の村人でも違和感を持たない。」

ルビレムの推薦の言葉に、彼女を知る者が皆声を上げて笑い、当の本人はやや照れながら誇らしげにしていた。

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