第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」
ザンダが補足した。
「まだ他に強敵がいるかもしれないよ。
実際にテンギと交戦することになったら、その時はおれも、ファラくんとお姉ちゃんに任せる。
別にこわがってそう言うんじゃないぜ。
ロマアヤで一番うまく戦うのがこの二人さ。
言ってしまえば、ファラくんはテンギ以外に気を取られたくないんだよ。
ただ・・・。」
テンギの側(そば)に強敵がいてもおかしくない。
ファラでなければ引き受けられない敵が、他にもいるとしたら・・・?
「ファラくんとお姉ちゃんが戦っている時に、別の敵が現れたら、そいつはおれが引き受ける。」
これには会議場がざわめき立った。
ルビレムとムゾールは異議を唱えた。
「それでは騎士の名が廃ります。
まず私にお任せください。」
「たしかにあなたはお強い。
しかしまだお若いのです。
陣中にいてくださるだけで、民も兵も力を増すでしょう。」
「忘れたのか!
王国をやめてロマアヤ公国にしたのは誰だ?
それがゼオヌール公じゃないか。
みんな、父さんの気持ちも分からず、下手に旧王家に肩入れするのはやめてくれ。
あんたたちを守るために、父さんは先頭に立って戦ったんじゃないか!」
家臣たちは苦しんだ。
ゼオヌール公は、今のザンダと同じ心で戦場に立ち、散っていったのだ。
先公を守れなかったことを悔いてこれまで戦ってきたのに、万が一、その公子まで失ってしまったら。
「わかっている。
ザンダ、君の判断で戦っていいよ。
その時はどうか、ルビレムさんもムゾールさんも、一緒に戦ってください。」
会議の場に、ウズダクとの連絡船でルアーズの通信が届けられた。
そこには、自由市国ミルゼオからの、別の手紙が同伴されていた。
「スヰフォス先生からだ・・・!!」
レボーヌ=ソォラをひとまず平定したLIFE騎士団が、次第にメレナティレへ南下していく旨が記され、結びにこう書かれていた。
ファラに対する警告である。
『リザブーグ城下で騎士団を訓練していた時からお前を狙っていた者があるらしい。
魔剣士ボルフマンを覚えているか。
奴ならば大したことはないが、その一味に危険な剣士がいる。
漆黒の鎧に身を包み、黒い馬を駆る、名前をガトレーンという男だ。』
LIFE騎士団がキャンプをしながらレボーヌ=ソォラへ向かう旅の途中、ずっと追跡してきた黒騎士がいた。
その男にファラの行方を教えてしまったことから、レヂョウは情報を集め続けたのである。