第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」
北の方から、大セト覇国の侵攻が始まったと伝えられてきた。
ファラはいよいよだと思った。
どのような大軍が押し寄せても撃退しなければならない。
ロマアヤにはすでに“LIFE”が息衝いているからだ。
ザンダ=ゼオヌールの名前で会議が召集された。
話をするのはムゾール=ディフだ。
「総帥ニサイェバは発狂したと聞く。
外征大臣バツベッハが国家を掌握。
陸軍大将にテンギ。
並の将兵ならばどうにでもなるが、テンギ一人が出ただけで我が軍は壊滅するだろう。」
間を割ってファラが言った。
「ロマアヤ軍として、テンギのことを考える必要はありません。
ぼくが一切、引き受けます。」
沈黙が走る。
皆、次の言葉を待つが、少年は何も言わない。
ルビレムが声を出した。
「その気持ちは有難い。
しかし、ファラ殿お一人に奴を任せることはできない。」
そこをフィヲが遮った。
「ファラくんだけじゃないわ。
わたしがいます。
一人の軍人のために国やイデーリアの未来が左右されるなんて、絶対に許しません。」
ヴェサも場にいたが、反対するのではなく、フィヲに加勢した。
「二人がテンギを引き付ける。
別に倒すなんて言ってないんだよ。
シャムヒィまで、今まで通り、攻めていくのがいい。」
聞いている者はわけが分からない。
テンギを倒さず、どうやってシャムヒィまで行くのか。