第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」
ウズダクの軍機構は、首都スタフィネルと南のヘッダフ内陸基地、そして東のソータスイーブ港で成り立っている。
ルアーズたちは現地のウズダク兵らを倒しながら味方に付け、すでにヘッダフ基地を占領していた。
だがスタフィネルを開かせることは困難を極めていた。
数日経ってブイッド港からソータスイーブを経てコダリヨン、ラゼヌター、メッティワが到着した。
「助かるわ。
大陸から来た兵士たちが、ここで倒した兵の治療にあたっているのよ。
全員、味方にしていくから。」
メッティワは正直、呆れていた。
昨日の敵がすぐに味方となるものだろうか。
これを見て取ったラゼヌターは、戦友に対し丁寧な説得をする。
コダリヨンはブイッド港攻略までの会戦ですでにロマアヤの味方となっており、鞍を返すように旧来の友と戦っては更なる味方を増やしてきた。
「戦闘が始まるまでは私もウズダク兵の手当てに力を尽くそう。」
ルアーズはスタフィネルや周辺住民の情報を集めて、ひっきりなしにブイッド港と連絡を取っていた。
両国を行き来する船は1時間に1本あった。
その都度、使いの者が往復している。
小さな村でも欠かさず使者を送り、ロマアヤの意向を話して聞かした。
すぐには承諾せず、使者に手紙を持たせてくる村が多かった。
またアンバスはただ一つの役割に徹していた。
すなわち、このヘッダフ基地を任されていたウズダクの軍人レスタルダという男の手当てである。
兵士らの怪我は、抵抗した者ほど重度であり、無抵抗だった者は無傷で降伏していた。
レスタルダは、部下や兵士たちが敗れ、降伏していくのを見て、自分が最後の一人になるまで戦った。
彼を倒したのはルアーズである。
アンバスは彼に語りかけた。
「あなたは立派に基地とウズダクを守りました。
わたしたちはウズダクやセトの侵略性だけを敵としています。
元々一つだったイデーリアの民が手を取り合えるように、そしてあなたたちの家族の望みである、ワイエン列島の平穏を実現するために、力を貸してください。」
「・・・スタフィネルをどうするつもりだ。
落としたいのか?」
これが、初めてレスタルダが発した言葉だった。