The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」

第 14 話
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メビカの頭領ヌダオンと青年王子ゼオヌール10世の出会いは、東方世界に大きな変化をもたらした。

2国が同盟関係を結んだことで、間に位置するウズダク海軍は身動きが取れなくなった。

当時ブイッド港はセトとロマアヤが半分ずつ治めていて、どちらの勝手なこともできぬよう互いに監視し合っていた。
それでもセトはウズダクと軍事貿易を拡大、明示的にロマアヤを威嚇する目的で兵士の輸送も行った。

メビカはこれに反発して、ワイエン列島の北側からセト国ズニミア半島に至る海上に停泊するなどした。
セトはロマアヤを攻撃すればメビカに攻められる恐れがある。
半島から軍都シャムヒィへはあまり距離がなく、兵員を割けば南から反撃されるに違いない。

またウズダクはセトへ派兵すれば手薄になり、やはり後方から攻められるだろう。

20年前の情勢を思い出し、ヌダオン=レウォは愉快な気分になった。
力に満ちていた40代の頃の血潮が戻ってきた。

思わず声を上げて笑いたくなる。

始めは侮ってかかったゼオヌールの息子を、今改めて立派な指導者だったと認めていた。

自ら人々の先頭に立ち、王位を廃して「魔導騎士」を名乗った。
剣と魔法の両方を駆使した戦法こそロマアヤの天分であると皆に教えた。

民族としての特質は大いに伸ばしつつ、他民族との融和も願った。
「ロマアヤ王国」を「ロマアヤ公国」とし、門扉を世界に向けて開放したのである。

その王子が後年、セトの奸計によって討ち取られてしまった。
ヌダオンは親と子ほどの年齢差にもかかわらず、昔の盟友ゼオヌール10世の仇を討つために、自らサーベルを引っ提げて戦いに赴かねばならないと思った。

サザナイアはどこにいるだろう。
きっと人が多く集まる所で、彼に話した如く瞳を輝かせ、世界の未来を展望しているに違いない。

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