第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」
ロマアヤ軍がブイッド港を占拠してからは、ウズダク経由でメビカに至ることができなくなっている。
降将に新しい役割を与えて軍を組織し直した後、メビカの首都ズマワービへ向かわせる人選も行われた。
任命されたのはリダルオの砦を守っていた戦士で、いずれも女性のリルーとオオンである。
彼女たちはサザナイアが来た時と同様、イデーリア大陸の南西端にあるロマアヤの隠れ里から小舟を出してメビカへ入った。
この島々を治める海賊の末裔たちは、ロマアヤに対しては味方の意識を持っているのだ。
本島に着くと、陸路で5キロほどの距離は車に揺られて行かなければならない。
警備の戦士が尋ねた。
「お前たちには見覚えがあるな。
おお、そうだ!
セト国の将軍ではないか!?」
人々の視線がこちらに注がれ、周囲がざわつき始めた。
「過去には確かにセトの将を務めていた。
リルーという。
だが見よ、ロマアヤの旗を。
我々はセトの民衆のためにも、ロマアヤ側に付くことにしたのだ!」
それでも番兵は黙っている。
集まった人たちも信じない。
皆が喚き出し、LIFE軍の一員として経験のない二人は、剣に訴えざるを得ないかと考えた。
先に剣の柄に手をかけようとしたのはリルーだった。
しかしそれを制するように、オオンが前に出た。
「正直に話そう。
私は女剣士サザナイアに敗れた。
どのように敗れたかといえば簡単だ。
彼女の一刀の下に倒されたのだ。
私は一人の武人として誓う。
ここへ来たのもロマアヤ軍の決定があったからに他ならないが、私個人の動機としては、彼女に、サザナイアに剣を習って、一緒に戦いたい。
ただそれだけなのだ。」
人々が去り始めた。
もう危険視していないらしい。
先日サザナイアが頭領ヌダオンに面会したという知らせは誰もが知っていた。
村人が仕事に戻っていくと、番兵はもう疑わない様子で教えてくれた。
「向こうに車乗り場がある。
首都との往復便だ。」
彼はそれしか言わなかったが、オオンは付け加えた。
「ロマアヤはセトと交戦中なのだ。
メビカと旧交のある者が来れば早かっただろうが、ロマアヤの家臣たちは皆残ることになった。
それで次の舟にズンナークという将、ジシューという将が乗ってくるが、名前を確かめたら私の仲間だから信用してはもらえないだろうか。」
兵は頷き、行けという合図を示した。
メビカは元々、旅人の往来を歓迎する国なのである。