第 09 章「無尽(むじん)」
第 01 節「天変地夭(てんぺんちよう)」
ロマアヤに降ったセト兵、ウズダク兵、及び水夫たちは、軍艦を取って返してアンバス、ルアーズらを祖国へ上陸させていた。
ウズダク海軍からすればこれは裏切り行為に見えたが、LIFE思想こそが祖国を、セトを、そして世界をも善なる方向へと押し進める方途であると知った兵士らは、家族のためにこそ、仲間たちの説得に奔走した。
事変を伝え聞いた後も、大勢の仲間たちが反抗することなくロマアヤに従軍したのを見て、そこには何かがあるに違いないと考える者が多かった。
いざ軍艦が入江に着き、ロマアヤの旗を掲げた武装兵団が上陸してきた時はさすがに動揺が走った。
各々(おのおの)武器を取り、駆け寄って戦意を確かめた。
こうした場合、祖国の兵、とりわけ旧知の間柄の者に出会うと、交戦の意思は挫けてしまう。
ルアーズは味方になったばかりの旧ウズダク兵たちの躊躇を一瞬で見て取り、自ら前に出た。
「セトの軍事行動に加担する者はその戦意を挫く!
我々は愚かな殺戮に終止符を打とうとするものである!!」
アンバスは魔法による防衛の全責任を担わざるを得ないことから、非魔法使いの戦闘員をどう守るか、悩み抜き、考え抜いた。
その結果、新しい「ロニネ(防壁)」の使い方を考案したのである。
今までルアーズのナックルにかけていたのは「トゥウィフ(衝撃)」だったが、これは攻撃に特化したやり方であり、銃撃などに遭えばあまりにも脆い。
活発な連続攻撃によって相手を制するのがルアーズの得意戦法としても、それは1対少数の場合に限られるのだ。
戦場に立てば1対大多数の攻防となる。
もしもルアーズが倒れるようなことがあれば、自分は一体、何のために魔法を修得してきたのか。
彼はルアーズの動作をよく見て知っていたので、彼女の戦い方の邪魔にならず、攻撃即防御となるような形態を考えた。
それは通常、平らな円形をしていて、両手の拳の外側に張られている。
ちょうど丸いシールドを両手に持っているように、手の甲の方まで回り込んだり、拳と平行に構えたりできる。
大きさはルアーズがどのような体勢にあっても全身が収まるくらいの円であり、正面からのあらゆる攻撃を防ぐ。
また、常に背後に一枚、円形のシールドを張った。
「ルアーズ、これで隙はほとんどないと思うけど、ジャンプした時に足元から撃たれると無防備だ。
靴にも小型のシールドを付けておくよ。」
「フィヲちゃんのロニネは一方通行ですごい性能だったわね。
あんなことはできないわけ?」
「う~ん、彼女は魔力も判断も、応用力も僕よりかなり格上なんだ・・・。
だけど君のモーションを一番よく知っているのは、たぶん僕さ。」
「あ、あなた、いつも見てるわけじゃないでしょうね。」