The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 03 節「千手(せんじゅ)の鬼神」

第 17 話
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ヴェサはアンバスにも関心を持った。
今までの彼女は、シェブロンが提唱した「魔法革命」という一大事業に協力することと、孫娘のようなフィヲの世話を焼くことばかりで、それ以外の人に関わろうとはしなかった。

それが今日初めて出会ったサザナイアに対し、戦法上のアドバイスを与えただけでなく、アンバスにまで助言を試みるとは。

「ほう、あんたはなかなかの魔法使いだね。
学者肌から入ったところがタフツァに似ているとも言える。
おお、タフツァを知らないね。
そのうち会えるだろう。
楽しみにしておいで。
シェブロンさん自慢のソマにも会えるよ。
・・・いいねえ、本当に、まだこれからの人たちは・・・。」

ヴェサが遠い目をするのを、初対面のルアーズたちは何とも思わなかったが、フィヲはここに異変を見て取った。
珍しく多弁になっているのは、この世で役立つものを少しでも残していきたいという、老いの本能かもしれない。

ファラとヴェサの付き合いはごく短い。
若い術士たち戦士たちの中でただ一人、フィヲはどうにもならない寂しい思いに身を震わせていた。

「闘神ヱイユには会ったのです。
ルアーズが先にイデーリアへ旅立つことになったと、知らせてくれたのが彼でした。」
「おお、おお。
今でこそLIFEをよく守護するが、ヱイユが手の付けられない暴れ者だった頃を知っているのは、ここではあたしだけだろう。
シェブロンさんやノイ、トーハなどは幼少の頃を知っているよ。
それにソマも当時の入門だね。
・・・少し前までのザンダが、ヱイユの子供の頃にそっくりだった。
やがてヱイユは大空の支配者となり、ザンダは人間の王者になる、か。
見た目に似たような二人だが、その生きる使命は深甚(じんじん)の意味を持っていたのさ・・・。」

サザナイアが指標をもらったので、自分も何か教えを乞いたいと、アンバスは重ねて頼んだ。

「うむ、金属を侵食する光か。
紫外線を使って酸化作用を高めているんだろう?
それを人体でなく、武器破壊に用いるとは。
LIFE戦術を発展させるために編み出したような技術だ。
シェブロンさんに教えてやったら喜ぶよ。
あたしも光を使う。
光に反応する兵器などを、触れることなく作動させたり、破壊することも可能だ。
光には殺傷力を与えることもできる。
といっても、レーザーはただでさえ高エネルギーで励起させる必要があるからね、威力を増せばそう何発も撃てはしない。
撃ち貫く光なら、あたしの魔力で2発もやればキュキュラ(総力)に相当する。」

誰かに師事したことも、弟子を持ったこともないヴェサが、珍しいことに、紙とペンを用意させ、彼女の魔法研究の集大成である「レーザー光」を起こす魔法陣を描いてみせた。
それを他の誰でもない、アンバスに説明して聞かせようと、かなり熱心に話し続けたのである。

「よしよし、無駄にするんじゃないよ。
なに、あんた一人のためにここまで説明しないさ・・・。
それから男なんだから、さっき言われてた通り、武器の一つくらいは修得しておいた方がいい。」

フィヲだけでなく、ファラも老婆の生命の燃焼を感じていた。
後世のため、LIFEの発展のために、一生かけて研究してきた成果を残そうという真剣さを。

二人は、その美しく力強い発光に包まれているようで心をうたれた。

続いてルアーズも助言を求める。
彼女はフィヲたちのようにヴェサの気持ちは分からない。

レーザーの魔法理論も難解で分かりはしなかった。
しかしヴェサが豊富な経験を持つ偉大な魔法使いであることは、身に迫って感じられた。

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