The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 03 節「千手(せんじゅ)の鬼神」

第 16 話
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船乗りたちに交じって食堂で昼食となった。

フィヲはいつもファラの近くにいたが、ヴェサがいる時はそうではない。
ヴェサの手を握り、ゆっくりと歩いた。

そこへファラも来た。
老婆に荷物があればかわりに持つようにしている。

ヴェサを中心として、フィヲが話し相手をし、ファラはじっくりと聞いた。
するとルアーズも、アンバスもサザナイアも来る。

皆、真剣にヴェサから何かを学ぼうとしていた。

「魔法の修得で行き詰っている者はいないかい?」

話す調子から、元気なヴェサに戻っているようだ。

サザナイアが質問した。

「同じ魔法でも、現象としての現れ方が人それぞれ違うように、魔力の強さというものも、全く異なっていると思います。
わたしは補助的に魔法を使うだけで、ファラさんたちのように、魔法の威力だけで押し切ったりはできません・・・。」
「ああ。
個性というものだ。
あたしは武器の扱いがダメでね。
応戦になったら魔法で戦うしかない。
それでいいと思うのさ。
あたしが敵を一人、遠くへ飛ばそうと思えば、『ゾー』やら『トゥウィフ』やらで魔力を消耗してやっとのことだ。
だがあんたの場合はどうだろう。
その長い剣の柄で、うまいこと突き飛ばすんじゃないかい?」
「すると、剣と魔法の戦術的な融合は、腕力と魔力のバランスによって補い合えばいいのですね。」
「なにもファラになろうとしなくても、あんたにはあんたにしかできないことがたくさんある。
その上でだ。
・・・ふむ、フィヲに『クネネフの本』をもらったようだね。」
「『クネネフ』は『トゥウィフ』のかわりに、剣に込めて使っていました。
けれど、フィヲさんなら突風で戦闘を回避することもできます。
もっとわたしらしく、有効に使えないでしょうか。」

ヴェサは真面目な女剣士に興味を持ったらしい。
その手を取って、彼女の指を皺(しわ)だらけの手でさするようにした。

「柔剣術の手だね。
自分の瞬発力と攻撃力が最大に生きるような戦い方をしている。
魔力の器を大きくしたいなら、今持っている力を使い切っては回復させ、また使い切る、というふうに意識していくといい。
腕が立つ分、魔法の素質を眠らせてしまっているね。
慣れるまでは苦しいかもしれないが、『クネネフ』に『ロニネ』を合わせて、風を身に纏いながら動いてみたらどうだろう。
そして魔力を長時間もたせるためには『テティムル』を修得するのがいい。」

アンバスがよほど言いたかったらしく口を開いた。

「サザナイアが魔法に長けたら、鬼に金棒だね。」
「ああっ、わらったなー!
魔法でアンバスと互角になって、杖捌きをビシバシ鍛えてやるからー!!」

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