The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 03 節「千手(せんじゅ)の鬼神」

第 13 話
前へ 戻る 次へ

演習といっても勝負であるからこそ力がつく。
薙ぎを飛び越えたファラは体勢を立て直したが、サザナイアはそこへ容赦なく一太刀入れた。

立て膝をついたまま、ファラは上段で剣を受け止める。

観戦に回っているフィヲは、サザナイアに好感を持っていても、ファラと交戦中では贔屓(ひいき)が出てしまう。

『加減しているわ・・・。
本当の敵が相手ならスライディング・タックルでもしたはずよ。
あれで受け止めて、どう返すかしら?
まさか投げたりできないし・・・。』

たしかに女性の仲間を相手にしていては出せない攻撃もある。
しかし勝負は勝負、限られた手の内で決しなければならない。

サザナイアとしては、ファラが攻めて来たら引けばいいし、守っている間は押し続ければいい。
またもし引いてきたら、相手にとって都合のよい体勢へ誘い込まれることはない。

ファラにとっては、実際、引くより他になかった。
力と力で組み合っていたバランスが崩されても、サザナイアは読んでいたので引っ張られない。

ここで突きを繰り出すのが、戦場でのファラの判断だろう。
だが女性を相手に強突など撃てようはずもないのである。

「優しいのね。
女の敵が現れたら、心配だわ。」

ファラも自身のそうした弱点に気づいている。
いかに凶悪な敵でも、女性を痛めつけたくはないのだ。

実戦なら魔法で倒せばよい。
では、今は・・・?

組み合いが解けたことで、ファラは後方へ退いたが、サザナイアは次の攻撃に転じてくる。
先手先手が信条のファラとして、いちいち彼女の一手を見てからでなければ仕掛けられないとは。

ついに来た。
初めて彼女を見た、あの日の戦場と同じ。

鮮烈に目に焼き付いて離れない、あまりにも美しく、速く、鋭い剣の舞い、強閃。

片手でも両手でも扱える彼女の剣は確かに一本だけだ。

それが、次々に編み出されて飛んでくる剣閃の数は無数であり、かわすというよりも直撃を避け、防具に当ててこらえる以外のすべがなかった・・・。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.