The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 03 節「千手(せんじゅ)の鬼神」

第 01 話
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大セト覇国の首都シャムヒィは、どす黒い憎しみと、殺戮という衝動に燃え立つ瞋恚(しんに)とが嵐のように吹き荒れていた。

軍港ブイッドがロマアヤ軍によって占拠されたのである。

ニサイェバ国家元帥はあまりの激昂で誰彼構わず怒鳴り散らし猛り狂ってしまっている。

なぜ、他の有力者たちはこの人物の下に屈しているのか。
それはセト国に根強い多数派極右が体制を固めているからである。

軍事侵略を唯一の国策とするセトは、表向きも裏側も暴力によって支配されてきたと言える。

貴族軍人の家柄を持つ政治家バツベッハはすぐに手を回し、同盟関係のウズダク海軍にブイッド港攻撃を指示していた。
陸軍の大将がデッデムなら、海軍の大将はウズダクの提督ドルントであるといってもよい。

セト国の窓口だったブイッド港が使えなくなった今、ウズダク海軍は敵対関係にあるメビカ船団の妨害に遭いながらズニミア半島経由でシャムヒィと連絡を取り合う。

軍国議会の場に参じたウズダクの使者はこう述べた。

「ドルント提督はブイッド港のロマアヤ軍撃退に最大限援護いたしたい意向ですが、メビカ船団は我が国が兵力を割いて手薄になる機を窺っているのです。
実際のところ、ズニミア半島周辺でのメビカの攻撃を理由に、全面戦争へ移行する考えが濃厚といえます。」

バツベッハは腕を組み、苦い表情を浮かべた。

メビカ船団がロマアヤと同盟している事実はない。
だが長年の対立がこのような時に邪魔になるとは。

この時、将軍テンギが話し始めた。

「待て待て。
メビカとの戦争になれば、ロマアヤは船団を形成し、ウズダクを攻めるであろう。
ワイエン列島を他所(よそ)の勢力、それもおそらくはロマアヤに、みすみすくれてやる気か。
まったくバカげている。」

確かに彼の言うことは筋が通っている。

しかしセトの上層部にはなぜか、テンギの態度を憎む者が多かった。
悪感情を起こして反駁するか、常に黙殺しようとするのだ。

それを一番分かっているのはテンギである。
彼は嘲笑うように議会に背を向けると、3メートルもある超長身を窮屈そうに曲げて扉をくぐり、場を後にした。

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