第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」
「ザンダ様っ!
ここからはどうか冷静に!!
あまり急いで行かれますと、前後囲まれてしまいますぞ。」
敵兵500の向こうにコダリヨン将軍が見えた。
ザンダは彼の姿を認めるや、怒鳴った。
「おれの標的はお前だからな!
今すぐ叩き潰してやるっ・・・!!」
変幻自在なザンダのロニネはピンと張り詰めた。
そして加速して駆けるドガァと彼の前面に、半球状の空気の渦を形成していく。
退(の)く者も斬りかかる者も弾き飛ばされ、セト軍は真っ二つに割れてしまった。
赤い馬にまたがったコダリヨンは圧倒されながらも大剣を身構えて迎える。
ザンダは勢いのまま攻撃型ロニネのバリアを前方のコダリヨン目掛けて突き飛ばした。
すると、馬の鐙(あぶみ)の上で、手綱を片手で握って立ち上がったコダリヨンが、右手から魔法を撃ってきた。
ロニネを破る「トゥウィフ」である。
「なにっ!?
魔法を使うか。」
ザンダのロニネはかなりの加速と強度を持っていたにもかかわらず、左右に割れて後方へ、兵らを壊乱させながら飛んで行った。
攻撃型バリアを破った鎌鼬(かまいたち)はザンダに迫る。
ふいにドガァがトゥウィフを避けて飛び上がった。
このようなアクションはザンダと常々練習してきた。
頭上をライオンに襲われて、さすがに馬も嘶(いなな)き、コダリヨンは飛び降りようとする。
そこをドガァは逃がさない。
食肉は欲しても、LIFEの一員として、生き物を狩ったりはしないドガァだ。
だが初めて対戦する敵手としては、ドガァの性情など知る由もない。
鋭利な爪、人間の力を遥かに越える強靭な腕に掴まれ、組み敷かれて大地を転がりまわったコダリヨンは、もう生命はないだろうと諦めてしまった。
一方ザンダは、ドガァが着地する時に暴れる馬の横へ飛び降り、「どう、どう・・・」と言って落ち着かせていた。
抵抗しないようなのでその背にまたがると、再びロニネを張りなおして戦場を駆け巡った。
老戦士ムゾール=ディフは、混戦に在っては自身も向こう見ずな荒くれ者の一分だったが、今は守るべきザンダの暴れ様に、顔色を青くしたり赤くしたりした。
敵兵を邪魔だとばかりに打ち倒し突き飛ばし、一刻も早くザンダの側(そば)へ駆けつけたかった。