第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」
「我こそは先公の嫡男、ザンダ=ゼオヌールである!
セトの軍人は末端にいたるまで父の仇。
一人残らず、この場で討ち取ってくれよう・・・!!」
その幼い体格に「魔導騎士」の鎧、サークレットを頂(いただ)き、ゼオヌール10世の剣を掲げた少年が、勇ましい若いライオンに乗って突進してくる。
セト兵たちの多くは、ようやく自らの罪の意識に苛まれ出していた。
しかし、セトの過ちを認めたくない者もいる。
異常な叫び声を上げてザンダへ斬りかかる兵があった。
ザンダは少しも手を抜くことなく攻撃型ロニネに閉じ込めた。
そして相手の生命に、年少者に対する侮蔑の念を見て取った彼は、激しい憎悪を燃え上がらせた。
兵士は剣撃も蹴撃も跳ね返り、球状ロニネの中でひっくり返ってしまう。
だがザンダは許さない。
ロニネごと旋回させ、敵軍の中を練るように這い回した。
両方向ともに攻撃型である彼のロニネに当たって、敵軍の兵らは薙ぎ倒され、壊乱の様相を呈する。
そこをドガァの機動力で駆け抜けたのだ。
「真に祖国を思う者はロマアヤへ降れ!
我が国の行軍は侵略に非ず。
愚かな戦争を生み出す人間の傲慢と権力の魔性とを打ち砕くためなり!」
この時すでに心を改める者もいた。
ザンダは行ってしまったので、彼らの心服の声が届くのは少し先のこととなる。
前日の会戦では、ファラが多くの味方を作ったのに対して、ザンダに倒された兵たちはリダルオへ引き上げる結果となった。
それが今日、ザンダとの交戦でロマアヤに降る志願兵は戦場ごとに現れた。
決定的な違いは何かといえば、ゼオヌール10世の跡継ぎであるという自覚であろう。
ドガァに乗って駆ける少年の前進はかなり速かった。
とともに彼を案ずるムゾール=ディフら家臣たちの焦りも行軍を速めていた。
更に今、500の大軍を前にして、ザンダの後方から、ロマアヤ古参兵らの戦闘用馬車が続々と集結してきたのである。