第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」
ドガァの背にまたがり、旧公国府を単騎で飛び出したザンダは、ついに南下してくるセト軍とぶつかった。
先発の戦車隊が掻き乱してくれた結果、隊列は崩れ、兵士たちは殺気立っている様子だ。
フスカ港からワイエン列島を船で渡ってくる途中、ファラはフィヲとザンダに様々な魔法を身につけさせた。
今回の旅まで、フィヲは実に「クネネフ(風)」と「ドファー(変化)」しか使えなかったのである。
ファラは、二人が大きな戦闘に加わらなければならないことを思って、最初に「ロニネ」を身につけるよう薦めていた。
「シェブロン先生から頂いた手紙だよ。
魔法の修得方法を教えてくださっている。
今は紙片だけれど、将来、ぼくらの手で必ず一冊の本にまとめよう。」
老婆ヴェサを驚かせたのは、フィヲのロニネが「一方通行」であって、見事に外からの攻撃を遮断、内からの攻撃を貫通することだった。
彼女は内心で舌を巻いていたが、皆のいる所で口に出して褒めることをしないで、特にザンダの関心を引くように言った。
「みてごらん、フィヲのロニネの強度は、この娘の意思の固さだよ。
どれ、お前のロニネは・・・?」
「ばあちゃん、先生の本はすごいんだぜ!
・・・さあ、腰抜かすなよッ!!」
海風に吹かれながら、甲板上に半球のロニネを発動させたザンダは、空気の渦を身に纏うようにした。
そしてバリアごと上空へ、更に広げながら飛ばしてしまった。
海上を横切っていく鳥に当たりそうになった時、ザンダのロニネは標的を中心とする球状へ形を変えた。
「こら、もうおやめ!」
「へへっ、わかったよー。」
海鳥は解放されたが、ザンダのロニネは再び降りてきて、彼の上に覆いかぶさっていた。
「ほう、なかなか操れるものだ。
再利用するとは。」
「だろっ!?
集中力が大事だね。」
同じものをフィヲに見せると彼女は言った。
「『攻撃型』なのね・・・。
ま、いっか。
ファラくんも使ってるし。」
「攻守一体がおれの信条なんだよ。
あとはスピードで攻めるから!!」
「たいへんだわっ、消耗が激しそうで・・・。」
ファラの評価はこうだ。
「形状が変えられるのは便利だね。
『トゥウィフ』が来たらロニネごとよけたりして。」
3人3様の反応を受けたザンダは、素直にありがたいなと思った。
・・・
昨日の会戦でも用いたロニネに、さまざまな改良を加えてきた成果が、今また試される。