The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」

第 16 話
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マサリム廠から戦車で北上したロマアヤの戦士ベリオングは、セトの将軍コダリヨン率いる兵500の中へ突入、集中攻撃を受けながら練り回った。

シールド材によって強化された戦車の外甲には剣も火薬も用を為さない。

20人ほどの兵が前を押えたところ、進めなくなって外から散々に叩かれたが、旋回して振り払ってしまった。
重鋼の車体で轢かれたらひとたまりもない。

操縦するベリオングも、軍の方針により敵の死傷者を出してはならないので注意に注意を重ねていた。

「くそっ!
こんなことで止められるものかっ!!」

上へよじ登って、走行中も叩いてくる者がいる。

3人乗りの戦車は、燃料を管理する1人と後方を見ている1人が役割を交代しながら操縦士を助ける仕組みになっていた。

「隊長、奴ら、歯が立たないので行っちまいますよ・・・。」
「ううむ!
指令では、北へ北へ、ブイッド港まで攻め上がれと言われているが・・・。」

総帥のムゾール=ディフとしては、戦車に期待する役割はそれで十分だった。
早くもリダルオ陥落の知らせが入っている。

敵は多いが、味方もかつてないほど膨れ上がっているという。

先発隊である戦車が、敵軍を撹乱しながら多少でも足止めしてくれればありがたい。
時間を浪費させ、矢弾を消耗させ、体力を削り、武器を破損させるならば効果は大きいのだ。

ベリオングは勇敢なために、敵と相対(あいたい)した場合、やり過ぎることを心配されてきた。
ルビレムの厳命で殺傷することはなくても、敵が強ければ強いほど、深手を負わせてしまう。

「俺を戦場に立たせてくれっ・・・!!
これじゃあ腕が鈍(にぶ)っちまう。」

すると部下の兵士が後ろから言った。

「おれたちみんな隊長の凄腕に惚れ込んでますんで。
ブイッドを越えれば首都シャムヒィまで、戦闘に次ぐ戦闘でしょう。
その時は活躍していただきます。」

だが物足りないのだろう。
ベリオングは急に、むきになったように車体をぐるぐる旋回させ、敵兵の群れを過剰なほどに蹴散らすのだった。

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