第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」
要塞の攻略をルビレムに託したファラも、遠くから旗を見た。
しかし、これで安心する彼ではない。
「フィヲ!
ルアーズさん!
ザンダを助けに行こう!!
今日は長い戦いになるよ。
暗くなっても、必ずブイッド港を押えるからね!!」
負傷した者は、兵士が兵士を助ける形で、旧公国府まで退がる。
それでも残った兵力だけで1000まで膨れ上がっていた。
こちらへ差し向けられてくる軍港ブイッドからの兵が1000もある。
旧公国府へ攻め寄せる兵が2000であり、合計3000を、南下を阻止して食い止めるのだ。
戦闘を収めて西へ返すロマアヤ軍の前で、ファラは意識してフィヲの近くを選び歩いた。
「無理してないかい?
慣れない戦闘で疲れたでしょ・・・?」
フィヲは、ファラが寄るのを気付きながら、そちらを見ないでいた。
どうしても微笑の浮かんでしまう頬は、砂埃で可愛らしく色付いている。
ファラは手袋を外し、自分の汗の染み込んだハンド・タオルで彼女の頬を拭うと、愛おしさが溢れてきてしまった。
この時初めてファラの目を見たフィヲは、しめったタオルを嬉しそうに手で押さえ、こたえた。
「ザンダは私の弟なのよ!
ファラくんよりも早く、助けに行くわ!!」
二人の笑い声が弾けると、遠くから見ていたルアーズは思わず顔を赤らめてサザナイアの肩に飛び付いた。
「あらっ、うらやましいじゃない!
・・・サザナイアも、そう思う?」
日が高く懸かっている。
そろそろ兵士たちに食事を取らせてやらなければならない。
ルアーズに半ば抱き付かれながら、サザナイアは別の観点から感動していた。
剣と魔法に抜きん出た少年ファラ。
一瞬の判断に優れ、どのような悪意をも跳ね返す少女フィヲ。
その二人が、近付いたり、それぞれ動いたりしながら、きちんとお互いの動きを確かめ合い、守り合っている。
ああ、急いでロマアヤに来た甲斐があった。
こんなに素晴らしい出会いを、親友ルアーズがもたらしてくれたのだ。
「ううん、私、とっても幸せよ。
だって、あなたやアンバスがいるんだもの・・・!!」