The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」

第 13 話
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リダルオ最後の戦いは、騎士ルビレムとセトの大将ズンナークの一騎打ちである。
両腕とも言える右将のリルー、左将のオオンはすでに倒れた。

「お前たちはセトの国策が非道であるとして大義に立ったつもりでいるらしい。
だが、力を以って他を捻じ伏せる。
戦闘力の強い者がこの大陸を征服することに何ら変わりないではないか。」
「愚かな!
我が軍を見よ、昨日はセトの兵だった者ばかり。
イデーリアは元々一つだ。
ニサイェバ家が軍事思想を持ち込んだために、ロマアヤの民が離反したのだ。
それが逆転してみればどうだ!
ロマアヤの“人道主義”の下、セトの兵士たちは皆、あんなに生き生きとしている。」

武門の子であるズンナークには、自ら背負ったものが正しいか間違っているかなど問題ではない。

戦争に勝つか負けるか。

してみれば、彼を捨ててロマアヤに与(くみ)した兵らは皆、裏切り者であり、理屈抜きに処罰するべきだと考える。
国家の上層部を軍人が席巻してしまったことこそ、セトの民にとって、またイデーリアにとっての不幸だった。

騎士ルビレムは本心でセトが憎かったに違いない。
ゼオヌール公とその妃を殺害した大将デッデムもその部下も、一人余さず血祭りに上げてやりたい気持ちだろう。

しかし、戦場において、仇敵を前にして、制御し難い憎悪の念が膨れ上がる時、いつもゼオヌール公の、そしてリュエンナ妃の優しい表情が浮かんだ。

『悪を憎んで人を憎まず』

ルビレムは奥歯を噛み締め、剣の柄を強く握って踏み止まる。

そして今、ズンナークが振り下ろそうとする無数の鋭い刃を持った、ノコギリのような剣に対し、ルビレムの渾身の一撃は、木っ端微塵の破壊力を示した。

敵の大将は恐怖の絶叫を残して吹き飛んだ。

金属の剣が砕け散るはずはない。
それがバラバラになってしまった。

ルビレムだけでなく、ロマアヤの民は魔法の素質を持っている。
つまり剣から起こったのは、一点に集約された怒りの爆発だったといえるだろう。

彼は確かに驚き、自身の内にある思いが、願いが、更には力が、目に見える形となって発現したことに満足した。

そう、今の一撃は満足だった。

ならば次の瞬間にも満足しなければならない。

ルビレムは、まだ地に着かないズンナークの額を手の平で捉えていた。
総力に近い一撃を繰り出した直後に、なんと素早い追撃か。

ズンナークを地面に叩きつけた彼は、その首を掴んで持ち上げ、目を睨みつけて言い放った。

「さあ!
お前の部隊は万策尽きたぞ!
これからどうする!?
ニサイェバの元へ逃げ帰るか?」

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