The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」

第 11 話
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400の兵に先駆けて、単独で敵軍の中へ斬り込み、剣閃に電撃を迸らせ炎を舞い飛ばしながら戦うファラへ少しずつ歩み寄って、フィヲも魔法で戦った。

蜘蛛(くも)が自らの糸にかからないように、フィヲのロニネは外からのあらゆる攻撃を弾きつつ、内側からの彼女の攻撃は皆、通っていた。
あまり自由に杖を振り回すのを見て、敵兵はロニネが張られていないと錯覚するほどだ。

まず戦場に少女が、それも可憐な娘がいることに、敵兵らは動揺した。
攻撃をするにも躊躇(ちゅうちょ)があり、実行する者は力を緩めてしまう。

右将のリルーは女剣士なので、男の兵らを叱り飛ばしてけしかけた。

「女を理由に、あの娘に手加減する者は、この私をも侮辱したとみなし、軍紀に照らして斬るぞ!」

だが、フィヲのロニネに当たった剣も槍も、密度の高い金属を打ったがごとく、刃が欠落したり、完全に破損したり、兵らも手を傷めたりした。

透明なバリアがこれほどまでの強度を持ち、しかも少女を包み込む球状は、その半径を大きく、あるいは小さくした。
一度に大勢が押し寄せた場合などは最小限までバリアを縮めて、跳ね返す時、爆発的に拡大するなど、まさに自在である。

ファラがリルー将軍と当たって、やはりやりにくそうに、遠慮がちに戦っているのを見て、フィヲは声を上げた。

「ファラくん!
その人は、引き受けます!」

リルーは大剣を操っていたが、腰に差した小剣をも抜いた。

「小娘め!
その首もぎ取ってくれよう!!」

しかし、強い言葉も、手練れた剣も、フィヲを恐れさせることはできなかった。

一歩も後退りせず、リルーの方へ攻めていくのだ。

一太刀、弾いた。
リルーは大きく体勢を崩し、危うく大剣を取り落としそうになったが、なんとか持ち直した。

次に、フィヲが杖を出している隙間目掛けて、小剣で突きを繰り出したが、これにはリルーの左手から血が滴り落ちるほどの反動が起こり、自ら負傷してしまった。

「ううっ、おのれっ・・・!!」

部下の前で、小娘と侮った相手に一太刀も浴びせることができなかった失態は、周囲ではなく彼女本人にとって屈辱的だ。
もはや左の手では武器を握ることもできない。

フィヲはリルーを憐れんで、腰につけたポーチから包帯を出すと、こう言った。

「あなたたちがしていることは、その怪我と同じよ。
セトが滅びるとしたら、それはあなたたちの侵略主義によってだわ。」

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