The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 02 節「烈日衝天(れつじつしょうてん)」

第 06 話
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ファラはフィヲを気遣って、20分ほど休憩しようと言った。

今来た戦野を振り返ると、ロマアヤの元セト兵たちが昨日まで味方だったジシュー配下の敗兵に声をかけ、排他的なセトの軍事侵略の非を説きながら、ロマアヤ軍が貫く“生命尊重”の国作りに協力しようと、真剣に呼びかけていた。

「きみのおかげで、まだほとんど消耗していないんだ。
今朝は、・・・反対してごめん。」
「そんな他人みたいな言い方はやめて。
私の願いはあなたと同じ。
シェブロン先生が提唱された“LIFE”を、このイデーリア大陸にも実現する。
私一人では何もできないけれど、ファラくんを助ければきっとできるって、信じています。」

二人は右にリダルオを、左に仲間の兵士たちを見て、壊れた戦車の残骸の上に腰掛けている。
ファラは彼女を直視できないでいた。

俯(うつむ)き加減に、しかし異性であることを意識し過ぎて戦局を見失ってはならないと自分に言い聞かせるように、ファラは考えながら言った。

「リダルオを落とせば大きな勢いになる。
少しでも早くリダルオにロマアヤの旗を打ち立てなければ。
そして、大軍相手に戦っているザンダやムゾールさんたちを、これから味方になるセト兵も全軍引き連れて助けに行こう。」

フィヲは何か言いたそうだ。
言葉にするのが決して上手くはない。

それでもどうにかして伝えようとする懸命な様子は、老婆ヴェサに愛されたように、接する者に感動を与える。

「ここに来てから、私は初めて“自分”という存在に出会ったの。
レボーヌ=ソォラでは、何をしていいのか、私に何ができるのか分からなかった。
それがやっと、目覚めてきたというか、・・・ファラくんの声が私の中に眠っているものを、いつも呼んでくれているみたいで。」

途切れながら、ファラの心を動揺させながら、少女の思いは語られていく。

「ザンダもね、ファラくんと出会ってからなのよ、あんなに素直になったのは。
私たち3人、きっと、生まれる前からずーっと、約束してこの世に生まれて、・・・何かを一緒にやり遂げようねって、ねえ、そんな感じがしない?」

頬を紅潮させ、瞳を輝かせるフィヲに、ファラもまた異性としての感情を超えた絆があることを強く思った。

「きみのこと、ザンダのこと、そしてLIFEを、“生命”を、ぼくが守るよ。
君と出会えて本当によかった・・・。」

あまりの感激でフィヲの肩を抱くファラの心に、わずかばかりだが、何か悲観的な想念が混じっていることを、少女は感じ取った。
今はまだ前面に表れていないそれを、育ち始めた母性によって優しく抱きしめながら、彼女は自分が女性として生まれてきた意味を、この時また新しく発見したのである。

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