第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」
朝が来た。
空は曇っていて、風の強い日だった。
大きな会戦を控えるファラの消耗を、フィヲは朝までに回復させなければと思った。
LIFE一行のテントには、兵士らの夕飯の後、老婆ヴェサも戻ってきた。
フィヲがファラの所にいるのを今では咎めたりしない。
彼女は若いリーダーとして立つファラが、確かにシェブロンやタフツァに次ぐ力をつけてきたと認めているのである。
シェブロンは人を育てるLIFEの継承者であり、タフツァはその教えを守り、身を以って仲間を守ることに優れている。
そしてファラは、師が無数の敵によって押し込められ発現されない絶大な力、広大な理想を受け継ぐとともに、それを存分に発揮し実現することができた。
ファラの寝床でそのまま眠っているフィヲを愛おしく見遣(や)りながら、ヴェサは安堵した表情を浮かべた。
17年前にこのロマアヤで出会った捨て子のフィヲが、ようやく帰る場所を見つけたのだ。
ヴェサがいなければここまで育つことのなかったフィヲも、近頃は弟子としての自覚が生まれ、LIFE一行の中での役割を自ら担うようになった。
ロマアヤの民が老体をいたわって作ってくれた寝台に身をおこし、孫娘のようなフィヲが目を覚まして慌てているのを、目を細めて眺めていた。
フィヲはすぐにヴェサの所へ来た。
「私、あそこでそのまま・・・。」
「いいんだよ。
お前が風邪をひくといけないからね。
あたしが布団をかけたんだ。」
「ごめんなさい・・・。
実は今日、みんなで話したいことがあるの。」
「うむ、あの子らが起きたらLIFEの会議にしよう。
食事の支度をしてやりな。」
水を汲み、鍋を火にかけて、野菜を切るフィヲは、起きて早々忙しそうだ。
その様子を見て、ヴェサはかわいそうだとは思わない。
幸せになっていく将来が目に浮かぶのだろう、楽しそうに、また時折、思い出すことがあるのか、涙を拭っていた。
やがてザンダが厠(かわや)に起きると、ファラも意識の奥底は緊張していたようで、寝床の上に飛び起きた。