The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 19 話
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ブイッド港の南方の森では、土色のマントに全身を覆った戦士が一人、木陰に身を隠して誰かを待っていた。

そこへ先の3人組の兵が姿を現すと、女性に特有の甲高い声を上げて駆け寄り、同じようにして迎えた女の兵士と抱き合ったのである。

「あははははっ、セトの警備もザルだわねっ!!」
「ルアーズ・・・、会いたかったー!!」

言うまでもなく、3人組の兵は、騎士ルビレムと女剣士サザナイア、魔法使いアンバスだった。

注意深いルビレムは、二人が軽率にも大声を上げたことを心配して、早く南方へ逃れるよう促(うなが)していた。

ルアーズはロマアヤから10人のゲリラ部隊に同行して来たのだが、ここからは軍港ブイッド付近の監視を彼らに任せ、まっすぐ南下はせず、南東、つまり敵の拠点「リダルオ南征衝」を奇襲することになっていた。

兵士の身なりを解かないまま夜行を続けると、先の森に潜伏していた部隊と直接の連絡関係にある隣のキャンプへ出た。

騎士ルビレムはゼオヌール公亡き後、こうしたルートを何年も渡り歩いて全軍の指揮を執ってきたのだ。
セト兵の格好で活動しているロマアヤ兵は彼ら3人だけではなく、実際に敵からの指示情報まで受けて行動中の仲間もいる。

したがってルビレムの元へは昼間は30分おき、夜中は1時間おきに報告の者が訪れており、南下しながら、夕方までに勝ち得たファラたちの戦況や、彼ら別部隊の明日の動きにいたるまで、全て聞こえていた。

サザナイアが感心して言う。

「ルビレムさん、相変わらず、休まれないんですか。」
「いや。
敵陣の中にも宿所は確保してあるのさ。
その地その地で、俺が寝ている間に報告を受けてくれる役目の者を決めておくんだ。」

もしロマアヤが軍隊としてまとまっていたなら、セトも探りを入れることができただろう。
ゲリラ作戦へ移行してからのロマアヤは雲集霧散、情報も手掛かりも掴むことは困難になった。

キャンプからキャンプへ、その所在を知る者でしか選べない道を縫い、深夜2時、明日までの宿所とするキャンプに着いた。
兵士は圧倒的に男性の方が多い。
けれど、ここには女性もいる。

明日の作戦を共にする、男性2名、女性2名がそれぞれ迷彩色のテントで交互に休み、交互に見張っていた。

2名ずつとしたら大きなテントだ。
それは事前に、ルビレムとアンバス、ルアーズとサザナイアが来ると知らされていたためである。

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