The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 17 話
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敗戦によって侵略戦争の非道を痛切に知った元セト兵たちは、倒れて動けなくなった無数の仲間を担いで連れてきていた。
土の上での生活を余儀なくされる中、ロマアヤの民が布を織って作っていた敷物を、テントのように張ることで傷病人のための屋根とした。

今朝までは敵同士だった両国の民が、手を取り合って同じ未来を目指そうとしているのだ。

そこでは、自らも負傷している兵が、より重篤な者に寝場所を譲るなどの光景が見られた。
ほどなくして、非戦闘員の女性たちが全員に行き渡るよう、食事を手配してくれた。

人間的な交流こそ、生命の尊さと自他の共存の必要を教えてくれる。

ザンダはファラにこれ以上無理をさせぬよう、LIFE一行の宿所まで強いて連れて行った。
普段は陽気な少年も、兄のように尊敬するファラが皆の方へ行こうとするのを、本気になって怒るのだ。

「おい、明日も戦うんだろ!
誰も代わりはいないんだぞ!!」

ロマアヤの民も元セト兵たちも、まだしばらくはファラが先頭に立って導かなければ多くの判断を過(あやま)つにちがいない。

LIFE戦術は一貫するからこそ力を発揮できるのだ。
どこかに矛盾を生じてしまえば切り崩されることになる。

味方の陣営にはフィヲもヴェサもいる。
ドガァの存在は頼もしい。

ルアーズとその仲間も参戦してくれるのだ。

騎士ルビレムと老将ムゾールがいる限り、心配などないかもしれない。

だが、もしもファラがいなくなったらどうか。

幼いザンダにも、今シェブロン博士と同じ役目を果たせるのはファラ以外いないということがよく分かっていた。

と同時に、ファラが気を遣っていること、つまり全軍を鼓舞して勝利に導く自分が、疲れた姿を見せるわけにはいかない、ということもまたザンダには分かった。

それでテントの中まで運び込んだ後、外から見られないように注意してファラを寝かせると、「正の五芒星」を描いた。
少しでも体力を回復させたいという気持ちからだ。

すぐに少女フィヲが来た。
皆の食事の準備をしていた彼女は、ロマアヤ軍の帰還からずっとファラの居場所を注視していて、やっと休めるようになったと見るや、二人とドガァへ、急ぎ食事をとらせなければと思ったのである。

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