The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 16 話
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旧公国府に着くと、今日の会戦で味方になった200人ほどの兵らが進み出て、亡命中の人々に深く頭を下げた。
彼らはファラたちとの戦いを通して、セトの軍国主義の誤りを知ったのである。

「我々は祖国セトの暴政を正すため、あなた方ロマアヤの兵に加えていただきたい。
戦乱でご家族を亡くされた方、そして英君ゼオヌール公を奪ってしまったこと、心からお詫び申し上げる・・・。」

双方に、涙を流す人がいた。
元セト兵の中には、いたたまれなくなって地面に両手を付き、謝罪の意を表する者もいた。

自ら彼らを招き入れたファラは、話し終わるまでじっと聞いていた。

そして体が疲労でふらふらになっていることを誰にも気付かせないよう、毅然と立って話し始めた。

「LIFEの同胞であられるロマアヤの皆さんは、軍事思想を憎んでも、彼らを憎む人はいないと信じています。
まだ1勝を挙げただけで、復興の道はこれからですが、ここで軍法として、一つだけ決めておきましょう。」

ファラは次のように提示した。

『民を害する者はその自由を奪う。』

「自由を奪う」というのは、捕縛するということである。

ロマアヤの人々も、元セト兵らも、誓いを込めて厳粛に聞いた。
そして全ての人が賛同した。

ムゾール=ディフが立ってファラと元セト兵たちに応える。

「イデーリア大陸は元々一つだ。
セトとロマアヤに分かれてきたのも、ただイデオロギーの違いのみ。
我らはどこまでも共存を願う。
対するセトの軍人どもは、己がエゴのために非のない民を侵略し、その生活を蹂躙した。
どこの国であれ、軍事思想などというものは絶対に容認されてはならん。
あなた方と同じように、セトの全ての人々が侵略を悔い改める時まで、イデーリアの民は試練をくぐることになるだろう。」

老戦士に呼応して、兵士も女性たちも、老人も子供も、皆が立ち上がり、右手を伸ばして声を上げた。
かつてロマアヤの国土として栄えたこの城跡に民衆の声が響き渡ると、それはいつまでも鳴り止まずに遠く広がっていった。

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