The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 14 話
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「勢いだけのザコどもめっ!
まとめて相手してやるッ!!」

今度は敵軍も逃げ出したりしない。
大将を討たれていきり立った猛者たちが、ファラ一人に襲いかかった。

もう一度、軍国思想への怒りを燃え上がらせた彼は、相手にしっかり聞こえるように声を浴びせながら斬りに斬った。

「何百人、何千人集まろうとも、セトに未来は絶対にない。
このぼくが叩き潰す。
なぜならお前たちが人殺しの仲間だからだ!!」

セト兵たちは、突き飛ばされ、蹴倒され、タックルを食らい、肘(ひじ)からの打撃を受け、戦闘不能の状態で倒れているのに、お互い無遠慮に踏み合っている。

もはや彼らには大義も名分もない。
やってきたこと、今こうして戦おうとしていることまで完全に非道だと断言されたのだ。
自己を正当化し続けるためには敵対する者を全滅させるのがてっとり早い、と彼らは考える。

まともにやりあえば誰一人としてファラに傷も負わせられないだろう。
しかし、少年は極限まで消耗していた。

幾重にも囲まれ、その全員を相手に剣を振るい、魔法で撃退するのには限度があった。
一瞬、意識を失いかけてしまう。

その時、少年の髪の色よりも深い青色をした巨大な狼が現れ、取り巻く兵らを散々に打ちのめした後、次から次へ援軍がやってくる方角へ、神速を以って駆け抜けた。

押し倒される者、振り払われる者、踏みつけられる者など、戦場は一体何が起こったか分からない混乱に陥った。

後方では、無刃刀の先端を地面に立てて、苦しそうに、そして今にも倒れそうに屈み込む少年の姿が見られる。

ジシューの大隊は壊滅してしまったが、元来、手練れの兵ばかりだ。

残兵らはまたしても悪魔に入り変わられ、ロマアヤ亡命国軍の先頭に立つ少年を狙っていた。

「おーい、ファラくん!
なっさけねーぞっ!!」

それは、セト軍目掛けて横殴りに突っ込んできたドガァと、背中にまたがるザンダだった。

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