The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 13 話
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迫り来たのは、先までの兵らと違う色の軍服を着た大隊で、350ほどの兵がいるだろうか。

剣を交えてみると、なかなか手強い。
全軍に勢いが漲っているようだ。

ファラは旋回する攻撃型ロニネで敵を弾き飛ばしながら剣撃も繰り出した。
テティムルで相手の体力を奪い、自分の魔力を回復している。

実際、大地からのヒーリングも間に合わないのだ。
それほど体力を消耗してしまっていた。

セトの敗兵を収めたロマアヤ軍も負けてはいない。
ファラが少し後退して見えるほど、後方からの攻勢が続く。

鬩ぎ合いの中、敵軍の士気がどこから来ているのかようやく分かった。

茶色い馬に乗った、大将のジシューという男である。
彼は鋭利な刃の巡らされた、巨大な扇状の武器を振り回し、風を起こしながら居丈高に叫ぶ。

「恐れるな!!
夜叉(やしゃ)となれ、羅刹(らせつ)となれ!!
敵兵の首を取れ!!」

よく通る声だ。
大将自ら、あり余る力でバッサバッサとロマアヤ軍に斬り込んでくる。

だが、仲間の血潮の飛沫を浴びて、ファラの目の色が変わった。

まるで火山が爆発したように、全身に火炎を纏(まと)い、ジシューへ躍りかかったのだ。

「お前は許さない!!
全て吹き飛ばしてやるッ・・・!!!」

突風が起こったのか、季節にもない猛吹雪でも見舞ったのか、猛将ジシューの鎧が粉々になり、後ろへバランスを崩した。
馬が嘶(いなな)いて、主(あるじ)の落馬を早めようとする。

この時ファラは馬を横へ薙ぎ倒すと、後先考えることもなく、腕の力か魔法の力か、周囲が身震いするほどの爆裂音を立て、強撃を一つ、敵将の正面に叩き込んでいた。

ジシューは声も出せず、地面に落ちることなく、今来た北東へ、後続の兵らの頭上を越えていってしまった。
兜を構成する皮具も金属も飛び散って、長い髭(ひげ)までが戦場に舞い散っていた。

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