The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 12 話
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逃げ腰の弱将に対して、ファラの怒りが爆発する。

「お前!
一体、何人の人生を食い物にしてきたんだ!
さあ、立て!
これぐらいで済まされると思っているのか!?
ほら、早くしろっ!!」

倒れて起き上がれない一軍の長を、少年は手加減もなく打ちに打ち、蹴りに蹴った。

「無様な奴め!
今のお前の姿が、セト国の明日そのものだ、覚えておけっ!!
・・・くそっ、よくも民衆を不幸にしたな!!」

年老いた将も、若い自信に満ちていた将も、皆、死ぬほどに泣き喚いた。
なぜ、これほどの屈辱を味わわせて、殺してくれないのか。

戦場で追い詰めた相手が自害を図ると、ファラの怒りは頂点に達した。

「ばかめ!
散々人を殺しておいて、そんなに父が憎いか、母が憎いか、祖国が憎いか!!
憎むべきはセトの軍事思想じゃないか!!
この、根性なしめっ!!
踝(くびす)を返せ、愚国に反旗を翻(ひるがえ)せ!
そして二度と、軍国として立てなくなるまで、叩きに叩け!
お前に嘘を教えた奴ら、一人残らず、生け捕ってこい!!
剣とは何か、このぼくが教えてやる!!」

襟元を両手で掴まれ、激しく揺すぶられながら、凶刃を捨て、うなだれる将たちの姿があった。

こうしてロマアヤの兵は、戦を重ねるごとに増え続けていったのである。

草原は夕暮れ時にさしかかっていた。

援軍によって500からの将兵を斬り伏せたファラは、さすがに剣も振れぬほどにくたびれていた。

「『キュキュラ』を放った直後みたいだ・・・。
うーっ、まだ来るかな・・・?」

膝に手をついて息衝きながら、疲れて乾いた目を瞬くと、北東の方角に大軍が見えた。

「よしっ、ヒーリングしながら戦う!」

夕陽を浴びた水色の髪を風に靡(なび)かせ、誰もがもう持ち上げることはできまいと思った鋼鉄の無刃刀を握り直して立つ少年は美しかった。

あれだけ動き、魔法も使い続けて、なお戦意を示すとは。

彼の刀背打ちによって軍国思想の虚偽に目覚めた兵ら、約80が今、共にいる。
負傷や疲労で本営へ戻らされた者を加えれば、全部で120名ほどだ。

「みんなッ!
ここで退(ひ)けば侮られる。
苦しいかもしれないけど、もう一戦、頑張ろう!!」

その声は凛として、心に響く。

一瞬の間を置き、そこら中から『うおおおおおおおー!!!』という声が起こり、再び全軍が奮い立った。

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