The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 10 話
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厳戒令が敷かれたブイッド港で、騎士ルビレムは息をひそめていなければならなかった。

すぐに港を去ろうにも追っ手が付くし、数日のうちに、サザナイア、アンバスが入港する予定になっている。
そこへ合流したいルアーズは今、少数のゲリラ部隊に加わって、付近の森で待機していた。

彼らを合流させた後、南方のロマアヤ領へ無事に入れるまで、ルビレムが身代わりとなっても戦うつもりなのだ。

だが、これまでのように浮浪者の身なりでうろうろするだけでも危うい。
町中を巡回するセト兵4~5人の組が、あちらこちらに見られるようになっていた。

渡航にはセトの同盟国ウズダクを通るだろう。
2人の仲間もこの大陸の情勢はよく知っているので、ロマアヤ宛に手紙を出すことは考えられなかった。

「ブイッド港 滞在中 ルアーズ様」として、サザナイアは一度、フスカ港から手紙を出している。

到着は記された日付から数えて16日前後。
唯一の手掛かりである。

来る船来る船、乗客の姿はなく、兵士や兵器、燃料、食糧などが運ばれてきた。
あるいは、ウズダクで客船の航海を見合わせているのかもしれない。

民を護るため戦場を駆けてきた戦士たちには、めまぐるしい敵軍の動向を察知しては奇襲、また奇襲の日々だった。
もし2人の船の到着が遅れるならば、早々に次の手を打って出なければならないのである。


「旧公国府」と「リダルオ南征衝」の間の草原地帯を最初の戦場に選んだファラは、ロマアヤ城跡に公国の旗を高く掲げ、ムゾール=ディフを総大将として本営を築いた。

老戦士らは北のブイッド港から来る敵軍を、いくつものゲリラ部隊で迎え撃つ準備をしていた。
一方ファラたちは、ヴェサとフィヲを本営に残して、ザンダ・ドガァの組と二手に分かれ、北東のリダルオからの軍勢を一手に引き受ける。

兵員50名を借り受けたファラが草原を攻め上がると、早くも300ほどの歩兵が姿を現した。

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