The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 03 話
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以来、ロマアヤは「公国」と改められ、ゼオヌール公を筆頭に、旧王族も庶民も隔てなく、セト国の悪しき軍事主義と戦い続けた。

民衆を国家の最上位に置いたゼオヌール10世は、全ての国民に跪(ひざまず)いて初代「魔導騎士」の称号を戴(いただ)くと、敵方の武器、とりわけ戦車などを破壊するゲリラ戦を展開、イデーリア大陸を駆け巡った。

当時、騎士ルビレムは常にゼオヌールの周囲を護るとともに、部下を指揮してどのような作戦も成功させた。

セトの陸軍大将デッデムがロマアヤ軍のキャンプを包囲した時、ルビレムは兵士たちを鼓舞して言った。

「我らの目的はセト兵との交戦ではない。
剣を交えるな。
武器を破壊せよ。
力ある者は敵軍を混乱に陥れるのだ。」

こうして敵方の馬を暴れさせ、戦車を壊し、盾を砕き、刃を鈍らせることにより、幾つもの戦線をくぐり抜けたのである。

度重なる失策は、デッデム大将の地位を危うくした。
つまり、ロマアヤに通謀しているのではないかと疑われるようになった。

セトの元首ニサイェバは通告した。

「陸軍の全権を握るお前が、弱小国のネズミどもも駆除できぬとなれば、広大な土地も財産も役には立たぬということか。」
「お、お許しください、必ず、必ずロマアヤを滅ぼしてご覧に入れましょう・・・!!」

それまで大軍を一挙に投入するだけが能だった大将デッデムも、地位を剥奪されるとなれば、ない知恵を振り絞った。
すなわち、ロマアヤ軍の分離策を狙ったのである。

兵力においてケタ違いのセトをいかに窮させるか。

ゼオヌール公は神出鬼没の少数ゲリラ戦を各地にまで押し広げ、出撃準備中の基地を奇襲することで相手を撹乱、攻撃を未然に防ぐことを念頭に置いていた。

侵略戦争を望んでいるのはセト国であり、ロマアヤとしては民を守るため、相手国の武器を減らすだけでなく、糧道を分断するなど、反戦・抵抗活動を続けたのである。

しかし、軍事大国セトがいつまでも翻弄されるということはなかった。

両国の戦局は終盤に至り、主力である騎士ルビレムの部隊と、ゼオヌール公の直属部隊とを切り離す工作が、意図的に、執拗に繰り返されるようになる。

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