The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 02 話
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兵力1万と言われる大セト覇国に対し、ロマアヤの民は戦闘員300人ほどしか持たない。

17年前の古代魔法グルガの解放は、魔法都市レボーヌ=ソォラや機械王国リザブーグだけでなく、軍事国セトにも悪しき影響をもたらしていた。
やがて、南北に独立していた2国が争うようになる。

暴力に対抗する手段として、同じく暴力をとるのか、あるいは政治的交渉によって共存を目指すのか、当時のロマアヤは岐路に立たされていた。

イデーリア大陸に戦乱を予見した魔法革命家シェブロンは、逸早(いちはや)くロマアヤに入り、国王ゼオヌール10世に進言した。

「セトは軍事国。
貴ロマアヤは魔法に長ける民族です。
人は目に見える形でしか真実を覚知できません。
魔法こそ、“生命の尊厳性”を具象化する能力なのです。」
「ふむ・・・。
たしかに“LIFE”は無上の力かもしれぬ。
だが我々の生命は、凶刃の下、いともたやすく絶たれてしまうではないか。」
「永きにわたり均衡を保ってきた両国が覇を競えば、大変な動乱となるでしょう。
極力、戦闘を避けるべきです。
そして民衆を忍耐強く育ててください。
セトの民がロマアヤに恨みを抱くようでは、収拾はつかなくなってしまいます。」

国王は、心配そうに見つめている后(きさき)リュエンナを見た。
戦争によって国が滅びることは、王家の根絶を意味するにちがいない。

「セトが軍事国家を築こうとするならば、ロマアヤの地は蹂躙されてしまうではないか。」
「隣人が覇道に狂う今、貴殿はその民にまで思いを馳せなくてはなりません。
愚かな軍人に統制される人々は、決して幸福ではないのです。
あなたが他に先駆けて賢王の使命を帯び、覇国の暴虐を止(とど)めて彼(か)の民までも救う時、世界は新しい局面を迎えるでしょう。」
「・・・わかった。
確かに、まともにやりあえば、我が軍は壊滅するであろう。
では、軍事力に、何を以って対抗すればいいのか。」
「人間どうし、信義をもって結び合う以外ありません。」
「むこうが信義に反した時は・・・?」

美しいリュエンナは、先の悲痛な面持ちから、強い意志に溢れる表情へと変わっていた。

「あなた。
これ以上、兵を犠牲にするのはやめましょう。
もしも一人の兵が戦闘で死ぬならば、それよりも先に私が身代わりとなって死にます・・・。」

こう言って泣き崩れる后を、王は抱きかかえるように支え、侍女に任せた。

「わたしも妻と同じ考えだ。
“LIFE”と、人間の信義だけを武器として、わたしが先頭に立とう。」
「よくぞ言われました。
ただし、死を急ぐことは絶対になりません。
生きる意志、信義を交える意思の上で、国家の主(あるじ)として生命を賭(と)す覚悟が要るのです。」

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