The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」

第 22 話
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「配置と篭城の準備が整う前に、なんとしても落としておきたい・・・!!」

タフツァの思いは皆、痛いほど分かっていた。

ザベラムに収容していた術士の数は、テビマワの規模の3倍ほどであり、ここを拠点として立て直すにも、すでに溢れた者たちが最終目的地である古都アミュ=ロヴァを目指している。

隣接する中立自由市国ミルゼオへマーラの術士たちを入れぬよう、守護を命じられていたオルグスの第四部隊、マシンクの第五部隊、バグティムトの第八部隊は、更にテビマワへ接近して臨戦態勢をとっていた。

「アミュ=ロヴァが危ない・・・!!」
「我々も古都の防衛に回るべきではないか?」
「だがここを通すわけにはいかないのだ・・・。」

彼らの任務はミルゼオの守護であり、アミュ=ロヴァの守護ではない。

オルグスが言った。

「全軍の指揮を執っているのは、スヰフォス殿とナズテインじゃないか。
きっと俺たちにも役目を回してくれる。
その時に悔いを残さぬよう、今はこの地を命に代えても守れ!」

他の部隊の士卒も皆、腹が決まった。

当のアミュ=ロヴァでは、緊迫した空気の中、市民たちが、今こそ生まれてきた意味を確かめるのだと、総決起していた。
先頭に立つのはソマである。

彼女が心から信頼するヤエが補佐してくれた。

「みんなッ、今持てる力以上のことは考えないで。
力の弱い人は腕の力に頼っちゃダメ。
接近戦が苦手なら、遠くからの援護に回るのよ!!
絶対に、絶対に無理をしてはいけないわ。」

群衆の中から女性の声が返ってきた。

「ソマさーん、わたしたち、覚悟はできています・・・!!」
「いけない、何を言っているの!
たとえアミュ=ロヴァが占領されたとしても、私たちは一人の犠牲者も出しません。
機を窺って取り戻せばいいじゃない!!」

次に男性の声が起こる。

「ソマさんを信じています!
みんなが同じ心で戦えば、きっと勝てる!!」
「そうだ、“LIFE”が負けるわけない!」
「僕たちは世界のために戦うんだ!!」

すぐにも戦場へ飛び出してしまいそうなくらい、人々は熱してきてしまった。

「最後にこれだけは聞いて!
“LIFE”とは、生きること!
みんなも、黒ローブの術士たちも、みんなが生きなければ意味がない・・・!!」

歓声と拍手、そして勝ち鬨が上がった。
辺り一面から喊(とき)の声が起こり、ずっと遠くまで、広がっていった。

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