第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
テヴァーンが飛び退いて離れたところへ、ワーツによって放たれた黒い球状の弾丸が、怪物の正面を捉え、そのまま覆い尽くすように広がった。
爬虫類の全身に液状の魔法現象が絡みついていく。
そして、もがき苦しむ合成獣の体を、黒い液がボタボタとしたたって落ちる様子が、急に重々しくなった。
爬虫類はそのまま背後へ倒れ、重みに耐えかねて、もはや何もできない。
やがて弾丸の黒い液は大地に消えた。
もう一方の怪物にも、テヴァーンは何もさせなかった。
下顎を警棒で打ち上げ、3メートルの巨体を後ろへ突き飛ばして、更に追い越し、背後から両肩を掴んで、ズシンと倒してしまったのである。
ノッグルが「コ」の字状の釘(ステップル)に似た投擲武器を空へ放ったと見ると、そこへテヴァーンは魔法を唱えた。
すると手裏剣のような小型の金具はみるみる大きくなって、獣型モンスターの喉を、地面に釘付けにしてしまった。
両手で杭を引き抜こうとして暴れる獣に、タフツァは「ゾー」をかけた。
これで2体とも動けない。
「ザベラム周辺にバリアが張られていく・・・。
しかし、あんなもので閉じ込められはしないさ。
砦外に術士がいなければ、中を隈(くま)なく探していこう。
ここで長居もできない。」
巡査隊の4人が走っていって、バリアの内側を見回ってくれた。
「ウィロ。
中は危険だ。
馬車で少し南へ行けば、別の部隊に合流できるよ。」
「いいえ。
一緒に行きます。
ぼくにできることはありませんか・・・?」
タフツァはしばらく考えていたが、意を決して言った。
「僕にしても、最初から戦闘に立てたわけじゃない。
シェブロン先生が戦われるのを後ろから見ていたんだ。
・・・いいかい、敵が何人きても、僕の背後には絶対に行かせない。
だから、きみは必ず、僕の後ろに立っていてくれ。
約束できるかな。」
「はいっ、お邪魔はしません・・・!!」