第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
城塞ザベラムでは、古都アミュ=ロヴァへの攻撃準備が進められていた。
彼らからすれば、LIFE騎士団に捕縛・連行された黒ローブの仲間たちを監獄から解放して、数百の味方を取り返しておきたいだろう。
その中には、首領の一人「怪人ラモー」もいる。
「悪魔復活」の目論みは外れたが、長年、魔法を奪われ続けた怨みはまだ晴れない。
行方不明になったフィフノスのことは、もはや誰もあてにしていなかった。
どんなに強大な魔力を持っていても、何を考えているのか分からないでは戦力に数えがたい。
「他国に救援を出さなくていいのか?
何度も言うけどよ、おらあLIFEは嫌だぜ・・・。」
「大セト覇国へか?
メレナティレか?
各地に潜む我らが同穴 (どうけつ) も、みすみす捕まりに来たりはしないさ。」
「まあ、万が一、ケプカスみたいになったら、おれがつなぎ合わせて新しい合成獣にしてやるよ。」
すでに触れたとおり、古代魔法学者ケプカスは、とうの昔に自らの肉体を失っている。
それで魔具職人ハイボンが常に近くにいて、体の調子を見てやらねばならない。
また、馬頭神モルパイェ=フューズ、羊頭神エンリツァーカ=ギールがヱイユの魔獣に食われてしまったので、ケプカスは悪魔の召喚ができなくなっている。
全軍の出撃にあたっては、LIFEとの交戦を嫌う奇術師ヨンドが部下20名とともにザベラムに篭城、バリアを張って守ることになっていた。
そこへ、呪士フラハという男が入ってきた。
「そろそろ行くが、お前たちは後から来るのか?」
「いや、おれらにゃあ、ここのケプカス様が頭領だとさ。
道端で出くわすものは、獣だろうがトカゲだろうが人間だろうが、みんなやっちまえばいい。」
「わかった。
それとテビマワはどうする?」
「あそこは捨てだ。
LIFEどもが隠れていやがる。
同穴が何十人も捕まえられた。」
「おそらく、うちの奴らはテビマワへ押し寄せる。
そこで敵を殲滅するだろう。」
「わははっ、まあ、うまくやるんだな!」
フラハが退出する。
と、その時、立て続けに爆発音が起こって、砦壁を、石の床を、ズシン、ズシンと揺るがした。
「くそーっ、やられる前にやってやるぜっ!!」
「総攻撃だ、いけーーー!!」
「敵に構うなっ、『アミュ=ロヴァ陥落!』」
「『アミュ=ロヴァ陥落!』」
「『アミュ=ロヴァ陥落!!」』
「一人残らずやっちまえーーー!!!」
ザベラムの西門から、叫喚の声がワーっと起こり、蜂の巣を叩いたように、黒ローブの術士たちが駆け出した。
その数、優に1000を超えているようだ。