第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
会議の途中、ザベラム監視部隊からの報告がもたらされた。
「城塞に張り巡らされていた魔法バリアが解除されました。
これが建造物の完成を意味するのか、罠であるのか、敵方の攻撃があるのか、引き続き探ってまいります。」
「現地の部隊には、くれぐれも動揺しないよう伝えてくれ。
君たちの任務はザベラムの動向をこちらへ伝えることに他ならない。
繰り返すようだが、交戦してはいけないし、術士たちの出撃があるならば必ず後退して見張るように。」
訪れた部下は敬礼して急ぎ戻っていった。
「ここからが重要な局面です。
今の部隊には後退を命じていますが、モアブルグの守護にあたる部隊は、場合によっては交戦し、敵を撃退しなければなりません。」
「私たちが主戦場にしたい地点は、ザベラム~テビマワ間の平地です。
それ以外の地域での戦闘は極力抑えていきたい。
別働隊としては、敵を西へ誘導するようにし、東、及び南への攻撃は食い止めるつもりです。」
もし、悪魔結社マーラが、北方へ逃れて別の拠点を作るようならば、そこはLIFEにとって盲点となる。
あと少し、戦力があったなら・・・。
今できることは、別働隊でザベラムに接近し、南東の方角からの攻撃を試みることである。
ただし、交戦を意図するのではなく、城塞内の術士たちに揺さぶりをかけることを目的としている。
南東から攻めて、敵が南東へ攻め返したならば、配備されている仲間たち各部隊に危険を招いてしまうからだ。
装備が整ったので、いよいよ馬車に乗り込んで出発することになった。
戦士ゴーツも見送りに出ているところで、御者の少年ウィロがタフツァたちに知らせた。
「あれっ、空に、竜がいます・・・!!」
タフツァは急いで荷台からおりた。
「ヱイユだ、無事だったんだ。
・・・おーい!!」
上空で、灰竜アーダが翼をはためかせている。
彼らはヱイユ本人が変化していると思って見ていたが、どうも様子が違う。
アーダの背中からヱイユの微笑む顔が見えて、力なく、手を振っているのが分かった。
「ヱイユっ、大丈夫かい!?」
頷いてみせたが、彼本来の威勢のいい声は返ってこない。