第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
タフツァはゴーツらに、アミュ=ロヴァでのLIFEと騎士団の動きを説明した。
戦士ゴーツは感心して聞いていた。
そして言った。
「町の防衛は任せてください。
外にも、ザベラム側に隊員を配し、更に別働隊を出せると思います。
それぞれ交代で休ませながらあたることになるでしょう。」
巡査隊はLIFE騎士団以上に訓練されている。
とても頼もしい存在であるとともに、守るべきもののためなら危険を顧みない気風があり、タフツァは言葉を交わすたびに、一人の犠牲も出さないことを固く約し合った。
「ザベラムの監視にあたっているメンバーは常時15名で、6時間ごとに休憩をとり、役割を交代します。
戦線よりもモアブルグ寄りには人員20名が宿営、別の5名が見張りに立つようになっています。」
戦役という非常事態に際しては、長期に亘る心構えで万全の体制を敷くことが大事だ。
隊員の疲れがたまらぬよう、十分な休息時間を確保しての運営は、さすがに長年この町を守ってきた部隊であることを思わせた。
『ザベラムの術士たちに、24時間、監視を続けていることは、大きな力だ。
戦闘になっても彼らは適切な判断ができるだろう。
のみならず、町の外にも警備を立て、もう一部隊を作るというが、あまり彼らに負担をかけすぎるのはよくない・・・。』
今タフツァが欲しいのは、城塞ザベラムに対してプレッシャーを与える役割だった。
危険な術士たちに万全な戦闘準備をさせてはいけない。
できるだけ不利な状態で外へおびき出し、LIFE騎士団・捕縛部隊の手に委ねたい。
「町の内外の防衛に最も多くの人数を残し、万一、攻撃があった場合に耐える態勢をとりましょう。
その上で、別働隊として4名、戦力をお借りできれば幸いです。」
「わかりました。
今夜中に手を回しましょう。
明朝の会議以降、お供させるようにいたします。」
こうして話をしている間にも、外からはゴーツの元へ報告に訪れる隊員が分刻みに入ってきた。
タフツァは話がまとまったので、協力に感謝して馬車の所へ、そして宿へ向かった。
御者は身寄りのない少年で、年はファラたちと変わらない。
職を求めていたのを、乗馬が得意だったため、スヰフォスらの勧めでタフツァの御者を務めることとなったのだ。
「ぼく、魔法に興味があって・・・。
一生懸命はたらきますので、どうか戦う力をつけさせてください・・・。」
「君は、何のために力を求めるんだい?」
「それはっ・・・、みんなが戦っている時に、自分だけ戦場から、逃げていたくないからですっ・・・!!」
「えらいね。
・・・じゃあ、もし、平和な時代が来たら?」
「そうしたら、ぼく、・・・学校に行きたいんだ。」
少年は胸がいっぱいになってしまったようだ。
タフツァは、彼の未来に大いなる希望を見出して、何を教えていくべきか、真剣に考えていた。