第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
ここで、軍師スヰフォスから、会議までに敵の情勢をまとめておくようにと命じられていたナズテインが報告を始めた。
「現在、テビマワは砦壁を閉ざし、魔法バリアを張って修復しています。
人数は10人ほど。
中に首領はいません。」
「修復が成れば悪魔結社マーラの拠点は二つになります。
術士の移動もあるでしょうし、動きが活発になることは明らかです。
この点、騎士団はどのようにお考えですか?」
「城塞への突入は危険を伴います。
必ず犠牲が出るでしょう。
LIFE騎士団は、敵・味方の双方から、一人の犠牲も出さずに戦います。
そのため、決戦は城内ではなく平地で行います。」
こう言いながらスヰフォスは笑みを浮かべた。
「テビマワの修復を完成させ、ザベラムとの行き来を遮断、術士を捕縛します。
平地で戦闘になる分には止むを得ません。
先回りして敵の勢力を把握した上で行います。
全面的な戦いとなる前に、極力、相手方の戦力を減衰させておく作戦です。」
「おお、それはいい!
最善の策だと思います。
私はモアブルグへ行き、巡査隊に合流するつもりです。
問題は、ザベラムですね・・・。」
「はい。
再び行方不明になったフィフノスを除いて、マーラの首領が集結しています。
ただ、ヱイユ殿の奮闘により、悪魔モルパイェ=フューズ、エンリツァーカ=ギール、カコラシューユ=ニサーヤは、いずれも滅んだという証言が少数民族から寄せられました。」
「みんなが恐れていた悪魔を、3体とも引き受けてくれたのね・・・。」
「しかし、ヱイユ殿は重傷を負われ、行方が分からなくなっているといいます。」
「そんなッ!
どうすれば、手掛かりがつかめるでしょう・・・。」
「第二・第七部隊の者がヱイユ殿と話をしたのが最後でして、消息を絶たれたと同時に、彼を追っていたと思われる白イタチと、それまでたびたび目撃されていた黒ローブの女の姿が見られなくなりました。」
「その女は神出鬼没、『魔天女ヒユル』という者だ。
魔法が使えないため、無数の武器を隠し持つと聞く。」
「ヱイユくんが心配だわ。
私、探しに行きたいのだけれど・・・。」
「ソマさん、彼の戦いは彼に任せておくべきです。
ヒユルは恐ろしい女。
私達の主力を5人割いたとしても、死傷者が出るでしょう。」
「いつも守ってくれた人が大変な時に、何もできないなんて・・・!」
ソマを行かせるわけにはいかなかった。
仮にヤエとサウォーヌの4人が同行しても、である。
「分かった。
僕とゴーツさんで、必ずヱイユを探し出してみせる。
離れていても君の願いは彼に通じるさ。
留守にする間、アミュ=ロヴァを頼むよ。」