第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
スヰフォスとナズテインが会議室に入ると、タフツァ、ソマ、ヤエはすでに席に着いていた。
「今、彼と、この国の未来について話しておったところです。
“LIFE”という、人類が歩むべき道がある。
それが次第に、『派閥』という名の枝分かれを起こし、互いに争うようになるのではないかと言う。
たしかにその通りだ。」
「国家にしてもそうです。
各々が国に分かれて、時に争い、時に手を取り合います。
しかし“LIFE”は国家を超えた、全人類的な理想であり、時代が変わっても、世代が交代しても、変わるべきではありません。
各国が“LIFE”の立場に立つならば戦争はなくなるでしょう。」
参加者のみならず、警備に立っている都兵たちまで、皆が頷いた。
先のやり取りから青年らしい熱を帯びているナズテインが語る。
「アミュ=ロヴァは世界の模範となるべきです。
そのために、人間が持つ、根強い『エゴイズム』を、どう乗り越えていくか。
世代が変わっても、醜い自身のエゴと戦い、乗り越えていこうという気風をどう樹立するかが、まず第一の課題であると思うのです。」
次にヤエが発言した。
彼女はソマよりも活発に議論ができる。
「民主主義の盲点は、エゴが大半を占めた場合、多数決によって悪しき方向へ、全体が流されてしまうことです。
私はこれを、とても危惧しています。」
「社会も国家も、世界も、運命共同体だ。
レボーヌ=ソォラが良くなっても、メレナティレが戦争をすれば必ず巻き込まれる。
大セト覇国が軍事路線を改めなければ、民衆の苦しみはなくならない。
人間とは、全ての他者が幸福になるその日まで、悩み続ける定めなのかもしれぬ。」
皆が共感を覚えつつ、少し沈黙があった。
「他者と決別する姿勢が『派閥』を作るという行為であるならば、どちらかが正しい場合と、どちらも間違っている場合があるのではないでしょうか。」
「仰る通り、全体を狂わせるわけにはいかず、苦渋の決断として、止むを得ず決別しなければならない場合もあるでしょう。
そうした時に、道を誤った人々はエゴイズムに立脚しているのだから、果たして元の道に帰ってこれるかどうか・・・。」
難題中の難題である。
それでも議論は核心に迫ってきた。
「善悪を教えるのは大人の責任です。
子を持つ人はもとより、教育に携わる全ての人が、“LIFE”を基調とした正しい哲学を持ち、万人と交わり協調しながら、子供たちに自らのエゴイズムと戦う術(すべ)を教えていくのです。」
「うむ!
全人類的視野に立った普遍的な教育の実現は、何にも増して優先するべき事項ですな!!」
「学校を作るのね。
私も、平和な時代が来たら・・・、先生になりたい。」
この会議で初めてソマが声を発した。