The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」

第 02 話
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古都アミュ=ロヴァでは、法皇ハフヌ6世の戦没が報じられ、民は喪に服したが、これによって貴族による議会制は完全に幕を閉じてしまった。

獄舎から出たタフツァが、ソマやヤエなどに「非魔法場」の作り方を教えて、捕縛・連行してきた数百人に上る黒ローブの術士たちを複数の建物に収容していた。

街の警備、囚人の移動・管理に至るまで元都兵たちがあたってくれた。

また、LIFEに志願してきた老若男女多くの市民たちは、ソマに教わったとおり、負傷した元衛士たちに治療を施す日々を送っている。

スヰフォスは言った。

「一人一人の国民が建国の意思を持ち、その根幹に“LIFE”を置こうとしている。
世界に先駆けてシェブロン博士の理想が実現されるに違いない。
ただし、眼前の課題もまだ多い。
マーラとの戦いは我々が引き受けるとして、経済の体制が大きく変わりつつある。
そして他国との貿易や交渉がなければ国家としては危うい。
どうしても政府が必要だ。
“LIFE”による建国ならば、どのような体制になるか。」

ナズテインは考えながら答えていった。

「やはり、民衆が選んだ代表が、話し合いによって多分野への役割を決め、進めていくことになるのではないでしょうか。」
「うむ。
各地域の代表というものは必要だ。
地域的な問題を国家的課題と位置付けて、皆で真摯に議論を交わし、解決していかなければならん。
それから分野の代表だ。
職業にしても、専門分野からの声が政治に反映されてこそ、偏りのない行政となろう。
国家は税収によって営まれる。
ならば、積み重なった問題・課題に対して、どのように予算を編成するかが重要だ。
適切な資金配分ができれば、苦しいながらも、各地域・各分野に伸展が生まれていく。
税金を捻出する国民は納得するだろう。
また、地域といっても分野といっても、目指すものは全ての国民が同じでなければならない。
つまり、“LIFE”による国家建設ということだ。」

イデア論としては確かにそうかもしれない。
だが現実はどうか。

「思想や宗教の自由は民主主義の大前提です。
今は皆“LIFE”による建国を望んでいますが、今後もし、他の思想を支持する人々が現れ、国家が取る路線に対しても異を唱え出したとしたら?」

さすがにスヰフォスが近くに置いている青年である。
ナズテインは未来のことまで考えていた。

「“LIFE”というのは、単に一人の魔法革命家が提唱した論ではない。
思想の多様性、宗教の多様性がどんなに進んでも、それらの根本にはしっかりと“LIFE”を据えなければならぬ。
“LIFE”を破壊するところから世は乱れる。
万人の生存の権利・幸福の権利の下に、思想の自由、宗教の自由、言論の自由がある。
生存と幸福は万人に共通であって、そこに派閥は存在しない。
反対に思想・宗教・言論には派閥が形成されよう。
だが忘れるな、派閥は全てエゴイズムから生まれるのだ。
万人が歩むべき道を勝手に反(そ)れておいて、あっちが正しい、こっちが正しいなどということは、おかしな話ではないか。」
「“LIFE”による社会建設を破壊するもの、それが人間のエゴイズムなのですね。」
「そう。
“LIFE”とはエゴイズムとの絶え間なき闘争。
人間は、生まれ持ったエゴイズムを乗り越えるためにこそ、手を取り合って協力し合うべきなのだ。」

第一部隊のメンバーが部屋に入ってきた。

「タフツァさんが見えられました。」
「よし、すぐに行く。
・・・ナズテイン君、同席したまえ。」

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