第 07 章「展転(てんでん)」
第 03 節「古都の防塁(ぼうるい)」
闇の都市ザベラムはすっかりその姿を変えていた。
一体どこから運んでくるのか、テビマワの砦に使われていたのと同じ石材が積み上げられ、悪魔結社マーラの新たな居城となっている。
地上5階、地下3階の堅牢な建築物に、黒いローブを着た術士たちが犇(ひしめ)き合っていた。
首領の一人ハイボンは、奇術師ヨンドとケプカスを相手に、冗談交じりで言う。
「恐れていたことがついに起きてしまった。
おれはヒユルに殺されるんじゃないか?」
ヨンドは品のない大声でゲラゲラと笑い転げている。
「カコラシューユ=ニサーヤが死んだらしいな。
・・・つまらぬ、あれも失敗作だったのさ。」
「確かに合成獣としては完全じゃなかっただろう。
しかし、おれが恐れているのは・・・。」
込み上げる笑いを抑えて、どうしても言いたかったらしく、ヨンドが後を続けた。
「・・・ヒユルがガキの頃、魔力を奪い取って白いイタチに合成した。
そのことがついにばれちまう!
まあ、今でもガキってとこは変わらねえがな、ぎゃっはっは。」
「われわれにとって少数民族の娘は危険過ぎる。
物心付く前に取り上げておいたのは正解だろう。」
「たしか、・・・3つの時に、ヒユルがおれたちの仲間を何人か殺したよな?」
「カーサ=ゴ=スーダの血を利用するつもりが、逆に酷い目に遭った。
死ぬ寸前まで搾り取ってイタチに注いだはいいが、生かしてしまったのは間違いだったか・・・。」
彼らはヒユルの報復を恐れているらしい。
だが、当のヒユルはそのことを知らない。
身寄りがなく、マーラに協力はしないものの、何かあるとハイボンたちを頼ってくるのだ。
「しかしエラいことになったな。
闘神ヱイユが、今ヒユルの所にいると聞いたぞ。」
「いっそヒユルの情夫にでもなって・・・。」
またしても下品な笑い声が階下まで響いた。
「あの女を敵に回したら、それこそ手がつけられない。
ヱイユやLIFEどもに恨みでも持たせられればいいんだが。」
「簡単さ!
ヱイユがヒユルに手を出すと思うか!?
そこをうまく利用すればいい・・・!!」
あまり表情を変えないケプカスも、この謀議には薄笑いを浮かべていた。