The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 02 節「魔天女ヒユル」

第 23 話
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一週間ほど前まで、異常気象による雨に浸(ひた)されたレボーヌ=ソォラ~カーサ=ゴ=スーダ地方だったが、その後の曇り空の下、砂地は乾いて、風が本来の埃(ほこり)っぽさを取り戻していた。

薄暗い夜明けは不気味な強風に煽られて、砂を巻き上げ、ひどく見通しが悪かった。

編まれて尖った黒い硬質の髪が風に吹かれている。
魔天女ヒユルは前髪が目にかかったり吹き上げられたりするのが忌々しい様子で、刃と棘(とげ)の付いたハイヒールを砂に埋もらせながら歩いていた。

この日は彼女にとって何か特別な日らしい。

「うふふっ、今度こそ、あたしのものにするから・・・!!」

合成によって悪魔カコラシューユ=ニサーヤが世に出現した時、人間の言葉を得て口にした数々の生い立ち、恨みや憎しみ、敵の存在、両親の最期などの中で、生を受けた日の出来事も語られていた。

すなわちニサーヤは、6年前の今日、この日に白い貂(テン)として生まれたのだ。

「あははっ、あれね・・・!!」

ザッザッと、慌てるでもなく歩み寄ったヒユルの両手の隙間から砂がこぼれ落ちる。

その手の平に残ったものは、白く細身な一匹の獣だった。
外側から見える無数の傷を負っていて、すでに虫の息であり、世を去ろうとしているらしかった。

「かわいそうなニサーヤ!
しっかりするのよ。
あなたは、あたしのペットになるんだから。」

そう言いながらもヒユルの顔には笑みが浮かんでいた。

「「苦しい・・・、我はこの後も生きたい、生き続けたい・・・。
そのためならば、お前の指の宝石へ宿ることも、また止むを得まい・・・。」」

ニサーヤの魔力の色であるピンクの光が曲線を描き、魔天女ヒユルの右手の小指に飾られた紫の宝石と同化する。

「きゃーーー、あたしのかわいい雌鼬(めいたち)ちゃん・・・!!
これからは、ずうっと、ずうっと一緒よ・・・。」

天に向かって、両手から様々な魔法を発動させては、気違いじみた叫び声を上げるヒユルは、ずいぶん長いこと、近くに倒れているもう一人の姿に気が付かなかった。

「あら・・・、どうしたの、大丈夫!?
あなたは、きっと、あたしの・・・!!」

もはや腕も上げられない状態のヱイユは、ヒユルの為(な)すがままとなって、ぐったりと、そして不本意な悔恨をその額の上に滲ませていた。

「心配いらないわ・・・。
あなた、とても気に入った。
ひどい傷だけれど、あたしが治してあげる。」

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